今日の東京新聞

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「種子法廃止を問い直す」 18年12月22日の記事から

 f:id:a-tabikarasu:20190108084453j:plain 4面 2018.12.22

<考える広場> 種子法廃止を問い直す 論説委員が聞く・飯尾歩 /4面

自治の力が試される」 元農相 山田正彦さん
 ミカンにしてもブドウにしてもスイカにしても、何だか種は邪魔者扱い。だからでしょうか。日本の主食を守ってくれていたはずの種子法がこの春ひっそり廃止になっても、関心はいまひとつ。でも、当たり前のことですが、種がなければ秋の実りもありません。元農相の山田正彦さんに聞きました。種子法廃止で、種はどうなる?

 飯尾 やれコシヒカリだ、ななつぼしだ、ゆめぴかりだ、ひとめぼれだ、新之助だ、だて正夢だと言いながら、私たちは、その「種」のことは、ほとんど気にしません。そもそも、おコメ自体が種なんですが・・・。だからでしょうか、種子法廃止は、衆参両院合わせてわずか12時間足らずの審議で、あっさり、ひっそり決まってしまったし、農家はともかく、私たち消費者にどのような影響があるのか、ないのか。事の重大さをなかなか実感しづらいようですが・・・。
 山田 そうやって私たちはこれまでずっと、日本の伝統的なおいしいコメを食べてきたじゃないですか。長い年月をかけて、苦労して、それらをつくり出してきたのが都道府県。種子法8条に「当該都道府県に普及すべき主要農作物の優良な品種を決定するー」と、書いてあったからなんです。種子法廃止の趣旨は結局、このように安価で安全な「公共の種子」をなくすということ、民間企業と市場に任せなさいということです。自治体が「原種」づくりから手を引けば、私たちは選択肢を奪われます。
 飯尾 改正水道法もそうですが、主食の種子は、いわば ”命の種” でもあるはずです。市場の原理、企業の論理に委ねてしまっていいのでしょうか。

 山田 そう。食料を売らない、水道の蛇口を閉めると言われれば、私たちは生きていけなくなるわけです。「食料を制するものは世界を制す」と、レーガン大統領時代の農務長官も言っていますが、米国にとっては武器にも匹敵する最重要の ”商品” です。モンサントのような多国籍企業は20世紀の終わりごろから、日本の米市場に狙いを定めています。種子法廃止で「食料支配」への門戸は大きく開かれました。
 モンサントバイエルンシンジェンタ・化工集団、ダウ・デュポンー。世界の種子市場の7割は、これらその多国籍企業による寡占状態です。日本の野菜は9割が、すでに彼らの支配下です。野菜には、種子法が及ばなかったからなんです。40年ほど前までは100%国産の固有種でした。次は、いよいよ野菜の7倍から8倍の市場規模があると言われるコメ、麦、大豆の番なんです。
 ちなみに、価格決定権が海外の企業に移ったことで、野菜の種の値段はずいぶん高くなりました。
 飯尾 遺伝子組み換えのコメとか麦とかも、「歓迎します」ということですか。
 山田 日本市場を狙った遺伝子組み換えの稲も、すでに用意されています。そもそもこの国は、世界で最も遺伝子組み換え作物に寛容な国なんです。欧州連合(EU)やロシア、中国の習近平さんも「作らせない」と言いだしました。ロシアでは遺伝子組み換え作物の輸入も一切禁止されています。日本では遺伝子組み換えの農作物の栽培認可件数だけで300件以上、当の米国よりはるかに多い。環太平洋連携協定(TPP)の批准後に承認件数を激増させました。
 その上、日本の環境省は今年8月、米農務省に続いて「ゲノム(全遺伝情報)編集は遺伝子組み換えではない」との見解を出しました。ゲノム編集技術は未知のもの、環境や人体への影響も定かでない。だからEUでは予防原則に基づいて、遺伝子組み換えと同じ扱いをすることになっています。日本と米国は、世界の潮流に取り残された、かなり異質な国なんです。

 飯尾 誰も「食料を売らない」とは言わないまでも、「その食料しか売らない」と言われれば、それを食べざるを得なくなる。知らず知らずのうちに食卓から選択肢が消えていく。例えばいくら遺伝子組み換え食品は不安だと思っても、ほかになければ仕方がない。それが食料支配。種が消えれば、どうなるかー。私たち消費者の、選択肢も消えるんだ。

 山田 種子法廃止に続く第2弾というわけではないんでしょうが、来年の通常国会には、種苗法の改正案が出てくるとみています。
 農家が買い入れた種や苗を増やして使う「自家増殖」。1991年に結ばれた「UPOV(ユポフ=植物の新品種の保護に関する)条約」は、「育成者権」の保護を名目に、原則これを禁じています。種や苗は企業の知的財産だから、勝手に増やしてはいけないというわけです。しかしさすがに日本の種苗法は、自家増殖を「原則容認」として、 ”例外的に” 禁止するべき作物を省令で定めてきた。それを「原則禁止」に180度転換すると言うんです。
 飯尾 人気の高いシャインマスカット(ブドウ)の種が中国へ流出したことが、問題になりましたよね。そういう事態を防ぐためだと聞いていますが・・・。
 山田 昔はコメも大豆も、種は自家採取だったんですよ。コメは公共の種子が普及して、今は1、2割、麦は6割、国産大豆はすべて自家採取なんですよ。多国籍企業の狙いは、だからー。
 飯尾 「国産」の牙城を崩すためには、種子法という外堀と種苗法という内堀が邪魔だった。
 山田 (種子法で守られてきた)コメも大豆も麦も種の自家採取を禁止して、遺伝子組み換え技術で作った種子を、日本の農家に作らせる。農薬と化学肥料をセットにね。これが米国の、多国籍企業の狙いではないかな。それには、種子法と種苗法が邪魔だったー。

 飯尾 それにしても分からない。なぜ、種といい、水といい、漁業権を開放する海といい、この国にとってかけがえのない ”命のタネ” を、政府というか、政権はいともたやすく他国に売ろうとするのでしょうか。
 山田 よく分かりませんが、沖縄に見るように、政府の上に米国がいて、さらにその上に多国籍企業がいるんでしょうか。
 だからというか、私たち「日本の種子(たね)を守る会」は、 ”地方” の議会や消費者に呼びかけているんです。都道府県の議会に対して、種子法に代わる条例をつくろうと。
 これを最初に新潟県議会がやったんです。兵庫県でも酒米が危ない、酒の味が変わってしまうと、種子条例を制定してくれました。埼玉では農家出身の自民党議員が中心となって「埼玉県主要農作物種子条例」を通し、山形が通し、富山が通し、北海道がやる、長野もやる。国の種子法が廃止されても、各県がそれをつくってしまえば、それで十分賄える。それが20も30も広がれば、政府としても、予算措置をせざるを得なくなるはずです。
 飯尾  ”地方” の力が試される?
 山田  ”国” だって本当は分かっていると思うんです。先の通常国会に、野党6党が種子法廃止撤回法案を共同で提出したんです。わずか3時間ほどですが、与党も審議に応じてきたんです。法案は、与野党一致で継続審議になっています。まだ、生きているんです。

やまだ・まさひこ 1942年、長崎県五島市生まれ。69年司法試験に合格するも故郷で牧場を開業。400頭の牛を飼い、年8000頭の豚を出荷した。しかし、オイルショックで経営を断念。農業の大型化、企業化に疑問を抱き、農政を志す。93年初当選し衆院5期。2010年、菅政権で農相。弁護士。

種子法 主要農作物種子法。1952年の制定。先の大戦の反省にたち、「国民を二度と飢えさせてはいけない」と、稲、大豆、麦類の優良な種子の開発と安定的な提供を、都道府県に義務づけた。これを根拠に都道府県は公費を投入、その土地の気候風土に合った奨励品種を開発し、農家に安価に提供し続けてきた。「民間の種子開発意欲を妨げる」と、今年4月に廃止。

<ブログコメント> 「今日の東京新聞」は、このあとしばらく休みます。
 今日紹介する記事は、昨年12月22日に掲載された「考える広場/種子法を問い直す」です。今、このような国の骨格にかかわることが、国会でもあまり審議されることなく次々と採決され、変えられています。種子法なんて地味だなあと思われるかもしれませんが、これは国の骨格、農政の基本です。これからボクシングのボディー・ブロウのように効いてきます。将来、2018年は、日本が変わってしまった年として記憶されるかもしれません。「モリ・カケ」や行政の「公文書改竄(かいざん)」、沖縄の「辺野古埋め立て」、「改正入管法」だけじゃなかったんですね。2018年は。
 次の本には、日本が「売られる」事例が数多く紹介されています。

・堤 未果 著 『日本が売られる』/幻冬舎新書(860円+税)2018年

安倍政権の「財界中心」政策 保守派からも異議 中島岳志

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<論壇時評>安倍政権の「財界中心」政策 保守派からも異議相次ぐ 中島岳志/6面

 外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法(入管難民法)の改正案が成立した。自由党山本太郎参院議員は、本会議場での投票の際、牛歩戦術で抵抗しつつ、「(法案に)賛成する者は、二度と『保守』と名乗るな! 保守と名乗るな! 『保身』だ!」と叫んだ。山本は「この国に生きる人々を低賃金競争に巻き込むのか、世界中の低賃金競争に」とも語り、与党議員に向かって「官邸の下請け! 経団連の下請け! 竹中平蔵の下請け!」と声を張り上げた。
 山本の叫びと呼応するのが、保守派の月刊誌『月刊日本』である。12月号では「奴隷扱いされる外国人労働者」と題した特集を組み、入管難民法改正に反対の姿勢を鮮明にしている。編集部は、従来の外国人技能実習制度がいかに外国人の人権を侵害し、過酷な労働を強いてきたかを訴えた上で、次のように論じる。
 「外国人労働者の人権侵害を防ぐ体制も整えず、なし崩し的に外国人労働者受け入れを拡大することは、さらにわが国の国際的信用を失墜させることになりかねない。外国人労働者を受け入れるのであれば、まず彼らの人権を守る仕組みとともに、外国人定住者、永住者を日本社会へ適応させるための社会統合政策を整えるべきだ」「一切の移民を受け入れないという極論を排し、外国人労働者受け入れに必要な体制を整えた上で、的確な制度を整えるべきだろう」
 まさに正論である。このような議論こそが保守の本領と言うべきである。
 同特集の中で、三橋貴明は安倍政権の政策を「安い労働力を確保したい経済界の意向に、ひたすらしたがっている」と批判する。本来、企業がやるべきなのは、「賃金の引き上げと生産性の向上に取り組むこと」であり、移民で人手不足を解消しようとする安易な政策は、日本人の実質賃金をさらに低下させると警告する。安倍内閣の狙いは、単なる人手不足解消ではなく、低賃金で働く人材の確保によって人件費全体を削減することにほかならない。
 入管難民法改正に対しては、日本礼賛本を出版し続けるケント・ギルバードも、自らのフェイスブック(11月23日投稿)で「場当たり的で身勝手な計画」と厳しく批判する。これは「非人道的」な「『使い捨て』政策」にほかならなず、外国人に対する「差別など、重大な人権問題に発展する」可能性があるとする。
 安倍政権の中核的な支持者からの反発は、他の政策でも相次いでいる。安倍首相は、2019年10月に消費税を10%に増税することを明言したが、これに対して内閣官房参与藤井聡は真っ向から批判の論陣をはり、『別冊クライテリオン 消費税を凍結せよ』を編集長として刊行した。ここで藤井は、消費税増税が「日本経済に極めて深刻な破壊的被害をもたらす」と警告した上で、「左右や党派、思想信条の別を超えて」立ち向かわねばならないとしている。
 この別冊に収録された「議員対談」には、自民党の安藤裕衆院議員と共に山本太郎議員が出席している。ここで山本は「消費税という『ブレーキ』を踏んでしまったことが、今の20年デフレ継続の状況を生んでしまっている」と語り、藤井の意見に共鳴している。藤井もまた党派性を超えて共産党の『赤旗日曜版』(11月18日)に登場し、消費税増税反対論を展開する。これを受けて共産党大門実紀史議員は11月22日の参院財政金融委員会で藤井の見解を紹介し、「増税だけで財政再建した国は一つもない」と主張した。
 ここに共通するのは、安倍内閣の財界中心主義に対する異議申し立てである。改正水道法による水道民営化や種子法廃止による種子市場への民間参入も同様だが、国民生活を守ることよりも財界の利益を優先するあり方に、保守が反発しているのだ。
 そもそも保守は議論を軽視した強行採決を是としない。保守思想は人間を不完全な存在と認識し、理性の限界を直視する。ひとりひとりの人間は間違いやすく愚かな存在である。そのためエリートの理性に基づく革命よりも、無名の死者たちが積み重ねてきた集合的経験知や良識を大切にする。
 <略>
 安倍内閣は、議論を極度に軽視する。その態度には、自分たちこそ正解を所有しているという過信が反映されている。そのような姿が保守であるはずがない。
 保守思想を大切にしてきた人たちが安倍内閣に反発する現象は、当然の帰結である。野党共闘は、このような本来の保守派と連動する形で展開されるべきであろう。 (なかじま・たけし/東京工業大教授)


<縁のカタチ>「墓友」になる・下 家族より仲間と「入りたい」/9面

 「ここで暮らし、亡くなってからも、向こうでずっと一緒よね」。神戸市西区のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「ゆいま~る伊川谷」に住む松村弘子さん(83)が、同じサ高住に住む友人の佐藤文子さん(89)に話しかける。すると佐藤さんは「ご主人のとこ、行かないの?」と、いたずらっぽく笑う。このサ高住には、入居者ら向けの合葬墓(共同墓)もあり、二人ともゆくゆくはその墓に入るよう申し込んでいる。
 松村さんは3年ほど前、亡くなった夫や義理の父母らが眠る家の墓をしまい、遺骨を大阪市内の寺で永代供養してもらった。夫と同じ墓に入らないことを責められることもあったが「夫は千の風になった。夫を思うと、すぐそばにいる感覚。同じ墓に入らなくても大丈夫」。
 このサ高住が開所した2009年に松村さんは入居。一緒に入居した中には、夫と死別した人や独身の人もいた。「亡くなった後が不安」という声もあり、入居者たちからの発案で、合葬墓の建設が検討され始めた。葬祭業者を交えて運営方法などを話し合い、近くにある霊園に合葬墓を建てた。
 松村さんは当初、夫と同じ墓に入るつもりだった。専業主婦として暮らし、女性の生き方を考える市民運動にも関わってきた。「私たちより上の世代は墓も、高齢者施設も『入れられる』という感覚。墓じまいや合葬墓は考えられなかったと思う。この10年ほどで社会の認識も変わり、こういうことを理解する人が多くなった」と感じる。
 合葬墓の話し合いに参加した松村さんは、自分の最期をどうするかということを話し合ううちに、仲間たちと意気投合。「私は地縁や血縁よりも、仲間との縁を大事にしたい。このメンバーだったら、同じお墓に入りたい」と思うようになった。その一方で、夫と一緒の墓に入らないことへの罪悪感もあった。
 しかし、墓じまいをせずに松村さんも家の墓に入ったら、墓は残り、東京や京都で暮らす三人の子どもたちの負担になりかねない。夫が元気なころは、二人で彼岸や盆にお参りに行くのを大変だと感じたことはなかったが、一人になって、年齢を重ねると「遠方にいる子どもたちには頼れない」との思いが強くなった。「お参りや掃除だけでなく、墓の管理費や寺への寄付も必要になる。子どもたちは気が楽になったのでは」と笑う。
 合葬墓には、入居者のほか、墓を管理する一般社団法人コミュニティネットワーク協会(東京)の会員や別々に暮らす入居者の家族、先祖らの遺骨も納められる。永代供養付きで、費用は一人当たり30万~60万円ほど。
 佐藤さんは以前から自分の墓が気がかりで、サ高住に入居する前には京都市にある独身女性向けの共同墓地に入る契約をしていた。しかし「だれかが京都までお骨を持って行くのも大変」と、その契約を解約して、合葬墓を選んだ。松村さんらと親しくなれたことも大きかった。「感じがいい人たちばかりでよかった」と話す。
 時々、松村さんは佐藤さんら入居者と、先に逝った仲間の思い出話もする。仲間たちは、合葬墓で眠っている。「あの人も、この人も同じ墓に入っていると思うと、親しみが湧く。一緒に入る人は墓友。向こうにいっても友だちという感覚ね」。自分で選んだ墓を仲立ちに、新たな縁を育んでいる。 (出口有紀)

東京新聞:<縁のカタチ>「墓友(はかとも)」になる(下) 家族より仲間と「入りたい」:暮らし(TOKYO Web)

本音のコラム 「美しい海」 斎藤美奈子

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本音のコラム  「美しい海」  斎藤美奈子/23面

 名護市辺野古の新基地建設をめぐり、モデルのローラさんが来年2月の県民投票まで、工事を停止するよう求める署名への参加を呼びかけた。
 それを快く思わない朴念仁が、どうやらこの国にはいるらしい。いわく「政治的発言」、いわく「不勉強で無責任」。
 芸能人が社会的な発言をすると、必ずこの種の非難がましい声が出る。2003年のイラク戦争の際にも、多くのミュージシャンや俳優が戦争反対を訴えて、「不勉強」と非難された。
 相手を不勉強呼ばわりする人は、では普天間飛行場はどうするのだ、といいたいのだろう。
 この件は「普天間辺野古か」の二択のように喧伝(けんでん)、報道されてきた。だが実際には、辺野古の基地建設によって普天間飛行場が返還されるという約束も保証もない。である以上「普天間飛行場辺野古移設問題」などの表現はやめて「辺野古の新基地建設」に統一すべきではないか。
 辺野古の案件は第一義的には環境問題だ。よってローラさんの認識は正しい。「この星と、ひとの、美しさのために。私たちにできることはなんだろう」とは、彼女が出演するエステティック・サロンのCMのコピーである。「美しい沖縄の埋め立てをみんなの声が集まれば止めることができるかもしれないの」という投稿とも響きあっている。論議するほうがおかしい。 (さいとう・みなこ/文芸評論家)

 

<縁のカタチ>「墓友」になる・上 地域のつながりなく決断/8面

 「秋の夕日に 照る山紅葉-」。木の葉が風に揺れ、鳥がさえずる中、高齢の男女20人の歌声が響く。歌っているのは、神戸市西区のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「ゆいま~る伊川谷」の入居者たちだ。毎年11月1日に住宅からほど近い霊園にあるお墓で開かれる合同供養祭。参列した大林孝さん(82)は、心の中で「いずれ私もここに入りますから、お世話になります」と、“先輩たち”に語り掛ける。
 墓は、一般社団法人「コミュニティネットワーク協会」(東京)が、希望する入居者や会員らが死後に入れるようにと、2012年に建立した合葬墓(共同墓)。現在、8柱が眠っており、34人が亡くなったら入ることにしている。大林さんもその一人だ。
 大林さんは、兵庫県北部の山あいの集落で長男として育った。死んだら家の墓に入るものと思ってきたが、定年退職後、京都市の社宅を引き払い、妻(78)とともに神戸市北区の自宅に戻ってから考えは変わった。
 自治会活動を始めて感じたのは、独居や夫婦二人の高齢者世帯が多いのに、隣近所のつながりが薄いこと。夜中に電気が付いている家を見つけ、人が倒れているのではと心配して声を掛けたが、迷惑そうに「こんな時間に」と怒られた。「隣家の木から落ち葉が大量に降ってくる」など、隣同士で話せば解決しそうなことでも、自治会に苦情が寄せられた。
 「向こう3軒両隣という世の中ではない。自分たちも要介護になったり、夫婦の片方が亡くなったりしても、ご近所の助け合いを期待しない生き方をしなくてはと思った」。40代の娘もいるが、遠方で働いている。自力では生活がままならなくなったとき、一体だれを頼っていいのか。
 元気なうちに入居できる高齢者住宅を探し、3年前に入居した。実家の墓も50代のころ、出身の集落にある共同墓地から、神戸市の寺に移していた。「でも、その墓もいずれは無縁墓になる。自分たちが死んで娘が一人になった時を考えた」と、合葬墓に移すことにした。同協会の理事で、大阪を拠点に高齢者住宅に関する相談を受けている米沢なな子さん(65)は「『おひとりさま』という言葉が出てきた20年ほど前から、墓に関する要望はあった。ついのすみかを決めると、墓も気になるようだ。迷っている間に認知症になった人もいる。元気なうちに決めることが大事」と話す。
 娘の分も墓を契約した大林さんは「入居者以外でも入れるところもいい。早く知っていれば苦労しなかったのに」とほほ笑む。頭に浮かぶのは、かつて実家の墓があった共同墓地。昔は盆や正月に車で2時間かけて帰省し、お参りに行くと、親戚や近所の人との交流があった。
 そんな場所に草が生い茂り、荒れていることに気付いたのは40代のころ。「掃除しないと目立つ」という親戚からの連絡も途絶え、周囲の墓も皆、同じようになった。「誰も会いに来ない墓は味気ない。合葬墓は自分たちが亡くなっても、誰かが参ってくれるので無残な状態にはならない」
 合同供養祭には毎年参加している。「向こうで仲間外れにされそうだから」と笑うが、仲間とのゆるやかなつながりが心地いい。「自分たちが亡くなっても、誰かが線香の一つでも上げてくれたら」

 さまざまな人たちの遺骨が埋葬される「合葬墓」。老人ホームなどが、入居者向けに運営する例も出てきた。血縁を超えて、同じ墓で眠る“墓友”を自分で選んだ人たちの思いを聞いた。 (出口有紀)

 

群馬/群響「より魅力ある演奏を」

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群馬/群響「より魅力ある演奏を」 19年度演奏プログラム発表/16面

 群馬交響楽団は2019年度の定期演奏会プログラムを発表した。来年3月で退任する大友直人音楽監督に代わり、世界的指揮者の小林研一郎さんが四月にミュージック・アドバイザーに就任。9月には新たな活動拠点となる高崎芸術劇場(高崎市栄町)が開館するなど節目のシーズンで、群響は「新しい響きをつくり、より魅力ある演奏を届けたい」としている。(石井宏昌)

 定期演奏会は10回開催。4~9月を前期として現行の拠点の群馬音楽センター(同市高松町)で、10月以降は後期として高崎芸術劇場で各5回公演する。小林さんの意向で年間を通してのテーマは設けず、小林さん推薦の指揮者やソリストを迎え、それぞれ得意な演目を披露してもらう。
 シーズン最初の4月13日は小林さんの就任披露演奏会でもあり、得意とするベートーベンの2曲を取り上げる。5月25日には群響名誉指揮者で元音楽監督の高関健さんマーラーを指揮する。60年近くにわたって親しんだ、群馬音楽センターでの最後の定期演奏会は9月1日。定期演奏会初登場の大井剛史さんが、ドボルザークの作品を指揮し、群馬交響楽団合唱団とともに締めくくる。
 後期のスタートとなる10月26日は、ロシアからアレクサンドル・ラザレフさんを指揮に迎える。群響の70年以上の歴史で初演となる、グラズノフバレエ音楽「四季」を披露し、高崎芸術劇場での定期演奏会の幕開けを飾る。年度最後の20年3月21日は、現音楽監督大友直人さんが登場。ソリストには注目の若手バイオリニスト、荒井里桜さんが群響初出演する。
 群響の渡会裕之音楽主幹は「良く知られた名曲から造詣の深いファンに喜ばれる曲まで、バランスの取れたプログラムになった」と説明。
 小林さんは「自信を持って推薦した指揮者やソリストがそろい、群響メンバーと共に素晴らしい響きをつくり上げてくれると思う。期待してください」とコメントを寄せた。 <略>

 

本音のコラム 「エスカレーターは歩かない」 宮子あずさ

 f:id:a-tabikarasu:20181224093440j:plain 1面/2018.12.24

本音のコラム 「エスカレーターは歩かない」 宮子あずさ/23面

 JR東日本は現在、東京駅でエスカレーターの歩行をやめるように呼びかけている。テレビのニュースではこの映像が、賛否の声と共に流されている。「安心して乗れる」と歓迎する声もあれば、「急いでいる時は歩きたい」と反対の声もある。
 同じ意見の人も多いと思うが、私は以前から、2列で乗るエスカレーターの片側を、歩く人のために空けておくのはおかしいと思っている。
 一番の理由はそれが完全に強者優先の論理だから。この乗り方では子どもや障がいのある人を並んで支えられない。また、身体の片側に麻痺(まひ)があり、空けるべき側にしか立てない人もいる。先を急ぐ強者のために、こうした人たちが怖い思いをする。こんなルールは絶対に間違っている。
 そしてもうひとつの理由は、それが理にかなっていないからだ。片側1列を空けるために列ができてしまう。結局2列で止まって乗った方が、多くの人が早く移動できる。これについてニュースの中でも実験が行われ、証明されていた。
 しかし、ここまで片側を空けないほうが良いとわかっていても、私は空けるべき右側に一人で立つ勇気がまだない。手始めに夫婦で出かける時、二人で手を繋(つな)いで並ぶことから始めるつもり。
 舌打ちされようと、怒られようと。これは看護師という仕事を選んだ者として、やらねばならぬと思う。 (みやこ・あずさ/看護師)

 

幼保無償化  保育士ら6割超「反対」/24面

 来年10月に実施予定の幼児教育・保育無償化に対し、民間アンケートで、保育士と幼稚園教諭の七割近くが「反対」と回答した。保育の利用申し込みが増えて現場の業務も増加し、「保育の質」が低下することを懸念している。
 調査は、保育士の就職支援サイトを運営するウェルクス(東京都)が9月にインターネットで実施。保育士・幼稚園教諭の資格を持つ全国の20~60代の男女687人が回答した。
 「無償化をどう思うか」との質問に67・1%が「反対」、32・9%が「賛成」と答えた。反対と答えた人に「不安に思うこと」を聞いたところ「業務負担の増加」「保育の質低下」「待機児童の増加」が多かった。
 無償化よりも必要なことを聞くと「保育士の確保」(82・8%)「保育園の増設、定員枠の拡大」(30・2%)などが挙がった。 <略>

東京新聞:幼保無償化 6割超「反対」 保育士・幼稚園教諭「利用増え質低下」:社会(TOKYO Web)

 

放射能測定マップ反響 市民団体自費出版

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放射能測定マップ売れ行き↑↑ 自費出版「遠からず1万部」/26面 

 東京電力福島第一原発事故による放射能汚染の状況を調べてきた市民グループ「みんなのデータサイト」が11月に発行した本「図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集」が売れている。自費出版では異例の一万部超えを目指す勢い。出荷作業に追われるメンバーらは、大手の書店でも買えるように準備を始めた。 (山川剛史)

 本は全てカラーのA4判200ページ。青森県から静岡県までの17都県で、延べ約4000人が計約3400カ所で土壌を集め、各地の市民測定所が調べた放射性セシウムの濃度を都県別の地図にした。事故から100年後の2111年まで、濃度がどう推移していくのか広域の予想図も付けた。
 福島第一原発から放出された膨大な放射性物質が、どんなルートで流れて汚染拡大につながったのか図表付きで解説。各地の市民測定所が、農作物や山菜、魚などの測定結果や国などの公表データを分析したコラムも収録している。 <略>

東京新聞:放射能測定マップ反響 自費出版、異例1万部準備:社会(TOKYO Web)

 

天皇陛下85歳  「平成が戦争のない時代として・・・」/1面

 天皇陛下は23日、85歳の誕生日を迎えられた。これに先立ち、皇居・宮殿で記者会見に臨み、戦争と戦後日本の歩みを振り返りながら「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵(あんど)しています」と、平和が続いていることへの率直な心情を吐露した。 (小松田健一)

 陛下は来年4月30日に退位して上皇となった後は、全ての公務を新天皇の皇太子さまに譲るため、誕生日会見は今回が最後。平和希求への思いや、長年にわたって陛下を支えた皇后さまについて語ったときは、声を震わせる場面もあった。会見では、自らの天皇在位や人生を旅に例え、「天皇としての旅を終えようとしている今、私はこれまで、象徴としての私の立場を受け入れ、私を支え続けてくれた多くの国民に衷心より感謝する」と、国民に謝意を示した。 <略>

東京新聞:平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに 心から安堵 天皇陛下85歳:社会(TOKYO Web)

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筆洗 2018. 12. 22 「足るを知る」

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筆洗 2018. 12. 22  「足るを知る」/1面

 ことわざは「立って半畳、寝て一畳、天下取っても二合半」と言っている。出世しても、富を得ても、人は畳半分か一枚分しか必要としないし、それ以上占めることもできない。一度に食べられる量にも限りがある。足るを知れ。欲を戒める教えだろう▼東京拘置所の部屋は三畳ほどしかないそうだ。豪華な食事は期待はできない。地位も富もある人は、そんな待遇を劣悪だと感じていただろうか。勾留されているカルロス・ゴーン容疑者である▼自白を迫るように勾留し続けるのは、人道上の問題がある。そんな声が海外から上がる中で、東京地裁が一昨日、延長を認めない決定を下した▼わが国の刑事司法制度の異質性にまで議論が及ぶ異例の展開である。繰り広げられているのが、いったい何の話であるのか。混乱しそうになった時に、ゴーン容疑者が昨日、特別背任という新たな容疑で、再逮捕された▼十八億円を超える損失を日産自動車に付け替えたなどの疑いがあるという。先月、疑惑としておおむね報じられているが、陰謀説も招いた有価証券報告書の虚偽記載とは、重みが違うだろう。事実ならば、悪質な私物化である。私的な投資による損失の額にも驚かされる▼事件はさらに長期化しそうだ。全体像がはっきりするのは先であろうが、やはり、足るを知らざる人の事件であるとみなされる日が来るのではないか。

 

9条俳句拒否  賠償確定 最高裁  上告退ける/31面

 憲法9条を詠んだ俳句を公民館だよりに載せなかったのは表現の自由の侵害だとして、作者の女性(78)がさいたま市に200万円の損害賠償を求めた請求で、最高裁第一小法廷(小池裕裁判長)は、女性と市双方の上告を退ける決定をした。市に慰謝料5000円の賠償を命じた二審判決が確定した。

さいたま市に作者「謝罪を」
 判決によると、女性は2014年6月、市内の公民館で活動する句会で「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」と詠んだ。公民館だよりに掲載する句に選ばれたが、公民館は「公平性、中立性を害する」と拒否した。
 一審さいたま地裁判決は「思想や信条を理由に不公平な取り扱いをした」として慰謝料5万円の賠償を命令。二審東京高裁も不公平な取り扱いをしたと認め、「不掲載に正当な理由があったとは言えない」と判断した。慰謝料は減額した。女性は句の掲載も求めたが、一審、二審とも退けた。 <略>