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防衛省 支払い延期要請 米兵器ローン急増で

 f:id:a-tabikarasu:20181129085526j:plain 1面/2018.11.29

防衛省 支払い延期要請 米兵器ローン急増で/1面

 防衛省が今月初め、国内の防衛関連企業62社に対し、2019年度に納品を受ける防衛装備品代金の支払いを2~4年延期してほしいと要請したことが関係者への取材で分かった。高額な米国製兵器の輸入拡大で「後年度負担」と呼ばれる兵器ローンの支払いが急増。編成中の19年度予算の概算要求では、要求基準を事実上2000億円超過しており、国内企業に「返済猶予」を求めるという異例の事態となっている。 (「税を追う」取材班)

 要請を受けた企業は「資金繰りに影響が出る」などと反発。企業側の同意がなければ支払いの先送りはできず、年末の19年度予算案の作成までに、どれだけ削減できるかは不透明だ。
 複数の関係者によると、防衛省は今月2日と5日の2回に分け、航空機や艦船の部品を扱う企業などを同省に呼んで説明会を開催。19年度に納品予定の部品の契約を変更して追加の発注を行う代わりに、代金の支払いは追加分が納入される21~23年度に一括して行うと提案した。今後、個別に各社と交渉したい考えを示したという。
 輸送機オスプレイや早期警戒機E2Dなど、安倍政権になってから米国政府の「対外有償軍事援助(FMS)」に基づく高額兵器の輸入が急増し、FMSのローン残高は本年度1兆1377億円と5年前の約6倍に拡大している。
 19年度に支払時期を迎えるローンは、国内産兵器分と合わせて2兆647億円。同時に支払額より4400億円多い2兆5100億円の新たなローンが発生する「自転車操業」の状態になっている。<略>

東京新聞:<税を追う>米兵器ローン急増 来年度予算圧迫 防衛省、支払い延期要請:社会(TOKYO Web)

 

借金増大 国会で検証を/1面

<解説> 防衛省が装備品代金の支払い延期という異例の措置を業界に求めていることが明らかになり、安倍政権による米国製兵器の輸入拡大が、毎年の予算の大幅増にもかかわらず、防衛費を圧迫している実態が鮮明になった。
 複数年で支払う装備品代金の繰り延べは過去にも行われてきたが、返済の最終期限を延ばすことはなかった。今回は追加発注という、いわばニンジンと抱き合わせで期限を延ばしており、防衛省のある元幹部は「過去にやったことはないのでは」と驚く。
 防衛省が「禁じ手」に踏み切る要因となった兵器ローンは2012年度まで3兆円前後で横ばいだった。だが、安倍政権のわずか6年間で2兆1000億円も増え、来年度は5兆3000億円と年間の防衛費に匹敵するまでに膨張。毎年、返済額を大きく上回る新規ローンが発生しており、今後さらに増えるのは必至だ。
 現場の自衛隊では、現政権が米国製兵器を急激に買い進めるあまり、維持整備や隊員の訓練にしわ寄せが出ていることに深刻な懸念が広がる。財政が危機的状況であるにもかかわらず、借金を増大させた原因と責任は、国会で検証する必要がある。 (鷲野史彦)

 

支払い延期要請 防衛業界  戸惑い、反発/31面

 「防衛省から話を聞いて社内でも『大変だ』となった」。防衛省が国内の防衛企業62社に求めた装備品代金の「支払い猶予」が業界に大きな波紋を広げている。「支払いを遅らせてくれ、というのはつらい」「我々にメリットはない」。企業側は戸惑いや反発を強めており、年末の予算案作成に向け、どれくらいの企業が応じるのか、先行きは見えない。 (「税を追う」取材班)

 「防衛省から『今、厳しいからよろしくお願いします』という話があった。来年度に全部の後年度負担(兵器ローン)を支払えないから、少しでも額を減らしたいのだろう。防衛省は本当に切羽詰まっている」
 支払い延期の要請を受けた防衛商社の幹部はそう証言する。11月初めに防衛省で開かれた説明会は多数の企業関係者で埋め尽くされたという。
 席上、防衛省の担当者は「自衛隊の安定的な運用のため、必要な部品の追加発注をしたい」と説明したという。だが、部品の追加発注だけなら新たに契約すればいいはず。既に入札や契約を終えた部品の支払いを延ばす理由にはならない。
 「米国から高額な兵器をいっぱい買った。その支払いがどんどん増え、しわ寄せが来ている」と、この幹部は分析する。 <略>

 

入管法改正案 衆院通過 審議わずか15時間の強行採決

 f:id:a-tabikarasu:20181129082305j:plain 1面/2018.11.28

入管法改正案 衆院通過 審議わずか15時間の強行採決/1面

 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案が27日の衆院本会議で、自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決され、参院に送付された。政府・与党は28日の参院審議入りを図り、12月10日までの今国会中の成立を目指す。 (木谷孝洋)

 立憲民主、国民民主、衆院会派「無所属の会」、共産、自由、社民、希望、衆院会派「未来日本」の野党8党派は、低賃金が指摘される外国人技能実習生の労働実態の解明が不十分なまま採決するのは拙速だなどとして改正案に反対した。
 本会議の討論で立民の山尾志桜里(しおり)氏は、失踪した実習生の法務省調査で理由を「より高い賃金を求めて」とした割合が約87%から約67%に訂正されたことを受け「外国人の深刻な人権、労働問題がある。虚偽データの発覚で問題に光が当たり始めた」と指摘。自民の平沢勝栄氏は「ほとんどの実習生は真摯(しんし)に実習に取り組み、制度は適切に運用されている」として、深刻な人手不足を理由に改正案成立の必要性を強調した。
 これに先立つ衆院法務委員会の採決では、立民などの野党四党派が葉梨康弘委員長(自民)の席を取り囲み強く抗議した。与党などが採決を強行し、改正案を本会議に緊急上程した。委員会での質疑時間は15時間45分だった。 <略>

東京新聞:入管法改正案が衆院通過 野党「拙速」8党派反対:政治(TOKYO Web)

 

 

筆洗 2018.11.28 「その場しのぎの酒を出し・・・」/1面

 年の瀬が近づくと聞きたくなる落語の「芝浜」。魚屋の熊さんはどうしてもお酒がやめられず、ついには仕事にも行かなくなる▼働いておくれよとせっつくおかみさんに「明日っから必ず仕事に行く。だから、きょうだけは思う存分、飲ませてくれよ」▼亭主の言葉を信じて笑顔で酒を振る舞うか。それとも心を鬼にして拒絶するか。こういう話なのかもしれない。政府が公表した消費税率10%への引き上げ対策のことである。引き上げによる景気悪化を防ぐため、キャッシュレス利用の消費者に5%のポイントを還元するなどの方針を打ち出した▼期間は引き上げから二〇二〇年夏まで。10%に上がっても5%分還(かえ)ってくるから差し引きすれば現行の8%よりもお得ということになる。どうやら、政府は将来のために酒をがまんしてと説得するおかみさんではなく、その場しのぎの酒を差し出す方らしい▼なるほど家計には朗報か。熊さんなら「ありがてえ」と涙ぐむだろう。さりとて、10%への引き上げは将来の財政や社会保障制度を考えた上での結論だったはず。景気の悪化は無論、避けたいが、そのために二兆円を超える大盤振る舞いの対策とはかえって国の財布を傷つけ、何のための引き上げかという話にもなろう▼酒を注ぐ優しいおかみさん。が、その酒には来年の統一地方選参院選での魂胆という「不純物」も混じる。

 

狙われる農産物コピー 和牛受精卵 中国へ流出未遂

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狙われる農産物コピー 和牛受精卵 中国へ流出未遂/26面

 世界的においしいと人気の和牛。今年7月、その受精卵を日本から中国に持ち出した男性が、農林水産省動物検疫所によって受精卵を没収されていたことが分かった。中国の税関を通過できず事件は未遂に終わったが、イチゴのように日本のブランド農産物が海外でコピーされるケースが相次いでおり、和牛もその一環として狙われているのだという。(大村歩)

 動物検疫所の福田史乃危機管理課長によると、和牛の受精卵を持ち出したのは、自称大阪府内の男性。帰国した際、税関に「動物検疫所に申告するものがある」と申し出たため、検疫所が調べたところ、液体窒素のボンべ内に、ストロー状容器に入った和牛の冷凍受精卵数百本を見つけた。
 男性は「知人に頼まれ中国に受精卵を持ち込もうとしたが、現地の税関を通過できなかったため持ち帰ってきた。違法とは知らなかった」と述べたという。
 家畜伝染病予防法では、和牛の精液や受精卵は、海外への持ち出しも持ち込みも検疫が必要で、輸出はできない。いったん中国へ持ち出した男性の行為は違法だ。しかし、動物検疫所では「警察にも相談したが、持ち帰った際の申告で発覚した事例で、悪質性が立証できない。刑事告発せず、受精卵をその場で廃棄させる措置にとどめた」 (福田課長)という。
 農水省が和牛の受精卵や精子に神経をとがらせるのにはわけがある。実は、1990年代に米国に輸出された生体の和牛の遺伝子がオーストラリアに渡った。豪州産「WAGYU」として大量に生産されており、EU欧州連合)やアジアでは、本家の和牛より広く一般に流通しているからだ。 「攻めの農政改革」(安倍晋三首相)を掲げ、農林水産物・食品の輸出額を1兆円とすることを目標に掲げる政府としては、「WAGYU」を駆逐して本家による巻き返しを図りたい考えだ。
 とはいえ、今回のケースには現場から厳しい声が上がる。和牛の精子や受精卵を扱う大渕牧場和牛人工授精所(群馬県沼田市)の大渕一氏は「持ち出したのは明らかに確信犯だと思う。どう持ち出したのか徹底的に調べてほしい」と話す。
 大渕氏によれば、現地の牛と交配させる精子の持ち出しと異なり、受精卵から生まれる牛はより日本産の和牛と近い。「持ち出しは事実上の生体輸出と変わらない」。実際、持ち出しをもくろむブローカー的な業者から商談を持ち掛けられることもあるというが、「この業界で仕事ができなくなるからやらない」という。ただ、そうしたヤミ業者は実在するという。「1回持ち出しに成功すれば日本の10倍、7、80万円になり、暴力団が関与しているとも聞く。今回は氷山の一角ではないか」と話す。
 近年では、日本の農産物技術や品種の海外流出が騒がれるケースが増えている。今年2月の平昌五輪でカーリングの日本代表選手らが「もぐもぐタイム」で食べた韓国産イチゴが、実はもとは静岡などのブランドイチゴだったと判明したのも記憶に新しい。日本ブランドを守るため、もっと水際対策をしっかりすべきか。
 農業ジャーナリストの大野和興氏は「確かに品種改良やブランド確立に励んでいる現場にとっては困ることだろう。ただ、いい品種や種子というのは世界に伝播していくもの。国境線はないし、水際で止めるとか知的財産権で守るというのも限界がある」と指摘。その上でこう語った。
 「ブランド農産物路線を進めていくと将来、日本人が買えないほど高価な農産物ばかりになるかもしれない。本末転倒にならないように、対外的な攻め一辺倒ではなく、庶民がふだん食べる農産物をどうするかの視点で、農政を転換すべきではないか」

 

本音のコラム 「介護は単純労働ではない」

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本音のコラム「介護は単純労働ではない」宮子あずさ/21面

 政府が成立を急ぐ入管難民法改正案。人手不足の分野を対象に一定に技能を持つ人について、新たな在留資格を認める。介護はこの分野に含まれるが、単純労働の扱い。在留資格は通算5年、家族が帯同できない限定的な資格となる。
 この法案には多くの疑問が指摘されているが、そもそも介護を単純労働とする前提が間違っている。介護労働の価値をわきまえぬこの国のあり方こそが、人手不足の原因にほかならない。
 以前働いていた急性期病院は、排泄や食事、保清など、日常生活援助は看護師の仕事。来る日も来る日も患者の身体を拭き、トイレに付き添い、オムツを替え、食事を食べさせていた。
 慌てて食べるとむせる人にはゆっくりと食事介助。焦って食べさせては、窒息の危険がある。衰弱した人がトイレに歩きたいと言ったら、ゆっくり立たせる。いきなり立つと、血圧が下がって倒れるかもしれない。
 急性期病院の入院期間が短くなり、施設や居宅介護でも、医療処置の多い人が増えた。これまで病院で看護師が担ってきたケアが、今では介護職にも求められている。
 必要なのは、こうした変化に見合った賃金の支払い。これを嫌って安い労働力を海外に求めるのは、介護を見くびっている。結果として、今働いている介護職のやる気をそぎ、離職を増やすだけであろう。(みやこ・あずさ/看護師)

コラム大波小波「女性器の語源を追う」

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コラム大波小波「女性器の語源を追う」/25面

 「おまんこ」の語源は何か。日本語学者はそれを研究に値しないものと考えてきた。希有(けう)な例外が歴史学者白鳥庫吉で「メノコ(女の子)」に接頭語を付加したものと説いた。が、論拠のない思いつきだ。
 松本修の『全国マン・チン分布考』(集英社インターナショナル)は労作である。彼は全国に厖大(ぼうだい)なアンケートを試み、「マンジュー」「チャンベ」「ボボ」といった女性器語の分布図を作成した。その結果、方言は文化の中心から波紋状に広がるという柳田国男の「方言周圏論」が今も正しいことを立証し、「マンジュー」から「おまんこ」が生じたという結論を得た。上方の雅語で、幼女の性器を饅頭(まんじゅう)に喩(たと)えて「まん」と呼ぶ習慣があり、さらに親愛の情から接頭語と指小辞(ししょうじ)が加えられた。卑語と化したのは、たかだか徳川時代末の江戸からにすぎない。青森出身の寺山修司は少年時代、「おまんこ」の一語に優雅を感じたと言う。

 <両の手で頬を包める優しさに「お」と「こ」はそっと「まん」を守れり>

 俵万智の歌である。「男」という言葉が掛詞(かけことば)として隠されていて、信頼感と優しさが滲(にじ)み出ている。長らく卑しめられてきたこの言葉を慈しみ、日本語の富を回復しようとする意志が感じられる。(桜)2018.11.25 

外国人労働者受け入れ 続く「移民」論争

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外国人労働者受け入れ 続く「移民」論争/2面

 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案を巡り、国会では事実上の移民政策かどうかが論点の一つになっている。安倍晋三首相は「移民政策ではない」と繰り返すが、移民の定義は曖昧だ。移民とは何か。受け入れるとどんな影響があるのか。肝心の部分が見えにくい論戦が続いている。 (柚木まり)

 「移民と言いたくない理由があるのか」
 5日の参院予算委員会立憲民主党蓮舫氏は、新たに受け入れる外国人と移民政策の関連について首相の見解をただした。
 首相は「移民の定義は多義的で、特定の定義があるわけではない」とした上で「期間を設けず、家族も帯同で受け入れる(という)、いわゆる移民政策はとらない」と語った。
 改正案は、一定の技能が必要な「特定技能1号」と、熟練技能が要る「特定技能2号」という在留資格を新設。1号は在留期限5年で家族帯同を認めず、2号は期限の更新と配偶者、子どもの帯同を可能とする。最長5年の在留が可能な技能実習生から新たな在留資格への移行も可能。1号を取得すれば計10年まで在留できる計算だ。
 永住権の取得要件に関し、法務省の指針は「日本に10年以上在留し、このうち就労資格を持って5年以上在留」などと定める。このため、永住につながり得る新たな在留資格を設ける改正案は、事実上の移民政策との見方が出ている。 <略>

東京新聞:外国人受け入れ問題 続く「移民」論争、ぼやける焦点:政治(TOKYO Web)

「仁徳天皇陵」調査 権力示す石敷き

 f:id:a-tabikarasu:20181124160831j:plain 1面/2018.11.23

「仁徳陵」調査 権力示す石敷き/1面

 仁徳天皇陵として宮内庁が管理する日本最大の前方後円墳・大山(だいせん)古墳(堺市、5世紀中ごろ)を共同発掘している同庁と堺市は22日、周濠(しゅうごう)の内堤で精巧な石敷きや円筒埴輪(はにわ)の列が見つかったと発表した。墳丘は通常、崩落を防ぐため葺石(ふきいし)で覆われているが、堤にまで石敷きを施した例は初めて。古代の大王の権力を示すとともに、謎の多い巨大古墳の構造を知る画期的な発見だ。=考古学の歴史的一歩7面

 石敷きは総面積約6万5000平方メートル(東京ドーム1. 4個分)の内堤全体にあった可能性が高く、研究者からは「桁違いの労力」「大王墓にふさわしい壮大な設計」と驚きの声が上がっている。宮内庁は同日、マスコミ各社と考古学研究者に現場を公開した。報道陣が大山古墳の内堤へ入ったのは初めて。
 大山古墳には3重の周濠と、その間に2つの堤がある。10月から内堤の3カ所を調査。幅約2メートル、長さ28~31メートルの範囲で発掘した。
 宮内庁によると、石敷きは3カ所全てにあり、堤の平たん面に白っぽいこぶし大の石が敷き詰められていた。
 平たん面の外側近くでは、地表面より約20~40センチ下で円筒埴輪(直径35~36センチ)の底部5つが築造当時のまま並んだ状態で見つかった。これまでに見つかっている円筒埴輪(5世紀前半~中ごろ)と同時期という。
 1973年にも今回の調査区の約100メートル西で宮内庁が円筒埴輪を確認しており、堤全体を巡っていたらしい。堤は全周約2. 6キロあり、約7000本が並んでいた計算になる。

東京新聞:「仁徳陵」権力示す石敷き:社会(TOKYO Web)

 

陵墓研究の歴史的一歩 「仁徳天皇陵」調査/7面

<解説> 多くが陵墓に指定され、研究が進んでいない古代の巨大古墳。その筆頭である大山(だいせん)古墳(仁徳=にんとく=天皇陵、堺市)で、宮内庁堺市による初の共同調査が実現した。発掘成果から見えてきたのは、国内外の目を意識したダイナミックな大王墓の姿。日本の考古学史上、歴史的な一歩だ。=1面参照

 「堤にまで石敷きが?」一報を聞いた多くの研究者が絶句した。大手ゼネコン・大林組の試算によれば、大山古墳の築造にかかる期間は古代で15年8カ月、動員されたのは延べ680万7000人。内堤全体が石で覆われていたとすれば、労力も資材もさらに必要だ。どんな狙いがあったか。
 石野博信兵庫県立考古博物館名誉館長は「まるで白亜のランドマーク。葺石(ふきいし)で覆われた墳丘と、それを囲む石敷きの堤は、太陽の光を受けて白く輝いて見えただろう。大山古墳は大阪湾沿いの台地端にあり、海上からも目を引いたはず。大陸からの使節は度肝を抜かれたのでは」と話す。
 大山古墳が築かれた5世紀は、朝鮮半島高句麗百済新羅が台頭。国際的な緊張が高まりつつあった。中国の史書宋書」によると、倭国(わこく、日本)の王5人が宋に使いを送ったのもこの時期だ。
 大山古墳の被葬者は、5人の王の1人なのか。「全ての謎を解く鍵は、時代のトップである大王墓が握っている。天皇陵であっても調査は必要だ」と石野名誉館長。
 堤の部分的な発掘ではあったが、今回の調査結果は当時の政治体制や国際情勢を考える大きな糸口になるだろう。自分の国の歴史を知ることは、国民の権利でもある。宮内庁にはさらなる調査と情報公開を望みたい。 (共同通信編集委員・平野恭子)