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盗聴、密告 「名をさらす勇気」

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本音のコラム 「不自由独裁党」 山口二郎

 数年前にベルリンに行ったとき、旧東ドイツの秘密警察の博物館を見学したことがある。今から見ればなんとも旧式なシステムだが、監視、盗聴、密告の仕組みがドイツ的きちょうめんさで整備されていたことに感心したのを覚えている。
 しかし、昔の息苦しい共産主義体制は今の日本にとって人ごとではなくなりつつある。前文部科学省事務次官の勤務時間外の私的行動が監視され、新聞にリークされた。また、釜山総領事が私的な会合で現政権の政策を批判したために更迭されたというニュースがあった。会話が盗聴されたか、密告者がいたかのどちらかである。
 職務に忠実な公務員とは、上からの指示をうのみにして行動するのではなく、自分なりに政策の当否を考えて、必要があれば上に対して疑問や異論を投げかける人物のはずだ。そうした議論の中から間違いを正していくのが、自由な体制の強みである。逆に、役所であれ企業であれ、組織の中に異論を許さない恐怖政治が敷かれれば、裸の王様が進める愚策をだれも止められず、全体として大失敗に陥る。
 今の日本で共謀罪が成立したら、政府の方針に楯突く人びとに対する抑圧は強まるに違いない。立法府で法案を審議し、政府を監視する役割を担うべき与党の政治家は、自分たちの党名を不自由独裁党に変える決意なのだろうか。(法政大教授)

 

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大波小波 「名をさらす勇気」

 少し前の話だが、本欄が『本の雑誌』でとりあげられたことがあった。そこで担当編集者が引用した中村光夫の言に「名を匿(かく)してものを言うのは本来臆病者の仕事です」とある。たしかに、と頷(うなず)かざるをえないのは、ここのところ、前文科省次官や、性暴力被害に遭った女性が、勇敢にも自らの顔と名を出して訴えているのを目にするからだ。
 彼らが自ら表に出て得をすることは何一つない。むしろ、訴えの内容と全く関係のない私生活の部分を暴かれ、いわゆるセカンドレイプにさえ晒(さら)される。大新聞を笠(かさ)に着た無署名記事やネット上のあまたの匿名の言葉が執拗(しつよう)に攻撃する。これはもはや「臆病者の仕事」を通り越して「卑怯(ひきょう)者の仕業」だ。日本の言論の将来を憂うどころか、まさに今が危機に瀕(ひん)しているのではないか。
 中村光夫は先の言につづけて、匿名批評には「『公衆』の代表者をもって自任する正義感と、力を自負する相手を『術』で倒す熟練と」が必要だ、とも述べていた。話題の二人は「術」はともかく「正義感」と「力を自負する相手を」「倒す」気概に満ちている。
 「臆病者」も、彼らとともに言論を守るため声を上げつづけたい。 (翼々)


<ブログコメント> 本音のコラムにある釜山総領事更迭事件。私的な会合での盗聴、密告。いやな話ですが私たちの今日です。いっぽうで前文科省事務次官の前川氏や安倍首相お気に入りの有名ジャーナリストによるレイプ事件もみ消しを実名告発した詩織さんのように、名をさらしても立ち上がる「勇気」ある人たちもいます。