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水道法改定と種子法の廃止

  f:id:a-tabikarasu:20170610081421j:plain 2017.6.10

国の根幹 売り渡すのか 水道法改定と種子法の廃止 池内了

 森友学園問題が起こり、加計学園問題へと飛び火し、「共謀罪」法案の強行採決があり、と慌ただしい政局に目を奪われているうちに、重要法案があまり広く議論されないまま拙速に決定されている。水道法改正案は3月に閣議決定され、種子法の廃止法案は既に国会で可決されてしまったからだ。いずれも環太平洋連携協定(TPP)の発効を前提に、国や自治体の管理であった事業を民間に開放しようというもので、規制緩和というかけ声の下、国や自治体が果たしてきた責任を放棄して多国籍企業に権益を明け渡す愚策である。このような日本の将来に禍根を残す重要問題が、いとも簡単に決められている。その弊害が累積して後世の人たちが苦しむのは必至だと思うが、そのときには決定に与(あずか)った現生の人間は誰もいない。私たちは、原発の放射性廃棄物といい、一千兆円を超す借金といい、なんと「子不幸、孫不幸」を重ねていることだろうか。
 水道法改定は、「広域化」という口実で都道府県への統合を促し、「官民連携」という名目で民営化への橋渡しをしようというものである。私たちの命の根元である水を「広域管理できる第三者に業務を委託するための整備」だと理屈づけるのだが、広域であればこそ民間業者が参入する、その条件整備をしようというわけだ。
 本来、水の安全管理や確保は採算を度外視して行政が行うべき事業であり、そのために私たちは税金を払っているのである。いくつかの国で水道事業を民営化した結果、値段が高騰して使いづらくなり、安全性や恒常性が保証されなくなったため、再び公営事業に戻そうとしたがノウハウが失われて莫大(ばくだい)な費用を要することになってしまったという事例が頻発した。安易に水道の民営化に走ると取り返しのつかない問題が生じ、命の危機に曝(さら)されかねないのである。
 一方、種子法は1952年に食糧増産という国家的要請のために国や都道府県が主導して「主要農作物の優良な種子の生産・普及を進める必要がある」との趣旨で制定された法律で、米・麦(大麦・裸麦・小麦)・大豆が「主要農作物」として指定された。これらについて各都道府県の奨励品種の指定、原原種・原種の生産、種子生産圃場(ほじょう)の指定、種子審査制度などを実施してきたのだ。
 こうして主要農作物の種子の開発・安定供給・保存などの予算措置が種子法で保証されることになり、農家は安心して安価に種子を手に入れることができた。ところが、今回の種子法の改定によって「民間企業との連携により種子を開発・供給することが必要」と理屈づけ、種子法を廃止するとしたのである。
 その結果として起こり得ることは、公的機関への予算措置が法的根拠を失うため縮小・廃止される可能性が高く、税金で開発・保存してきた種子やその関連事業が外資系を含む民間企業に払い下げられる危機に遭遇することである。モンサントカーギルなどの多国籍企業が種子を独占し、農家は毎年高い特許料込みの種子を買わされる事態になりかねず、この法律が施行されれば日本の農業はますます衰退して食料自給率が低下していくのは必至である。
 日本で開発してきた主要農作物の種子の多様性はいわば公的財産であり、それを民間に売り渡すようになれば日本の食の安全保障の観点からも危険性が大きい。規制緩和というかけ声で国の根幹まで多国籍企業に売り渡そうとしていることに強く反対する。 (いけうち・さとる=総合研究大学院名誉教授)


<ブログコメント>みなさん、日本でつくられる野菜の種がどこで生産されているかご存じですか。たとえば今手元にある種の袋を確認すると(自給畑で栽培)、トウモロコシはチリ、ダイコンは韓国、ニンジンは南アフリカ、エダマメは中国、レタスはアメリカ・・・となっています。ホームセンターなどで買ってきた一代交配の種子です。一代交配(F1)とは、栽培したあと種をとって植えても二代目からは発芽率が極端に落ちる(ように加工された)種のことです。一代交配である限り、種は毎年買わなければなりません。ちなみに東京野菜の小松菜の種も生産地はインドネシアとなっていました。