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議論を封じる安倍内閣 / 稲田防衛相発言

  f:id:a-tabikarasu:20170628092708j:plain 2017.6.28

論壇時評「保守政治の王道踏み外す」議論を封じる安倍内閣 中島岳志

 戦後すぐに皇太子明仁親王(現在の天皇)の教育係を担った小泉信三・元慶応義塾塾長は、共産主義国家への批判を展開したことでも知られた。小泉は1951年に発表した「共産主義と人間尊重」という論考の中で、ソ連という国家には「人間尊重の精神」が欠如していると指摘し、「猜疑(さいぎ)」や「憎嫉(ぞうしつ)」という「人間の弱点」につけ込んで人を動かそうとする政治手法を厳しく非難した。共産主義に蔓延(まんえん)するのは権力に対する畏怖や忖度(そんたく)であり、自由闊達な議論は封じ込められる。反対者への懲罰が露骨になり、過度の萎縮が蔓延する。

権力による脅し
 小泉の共産主義批判は、いまの安倍政治にこそ当てはまる。森友学園問題で「安倍総理から寄付金があった」と発言した籠池泰典前理事長に対しては、「首相への侮辱」を理由に証人喚間招致がなされた。加計(かけ)学園問題で内部文書の存在を明かした前川喜平・前文部科学事務次官に対しては、人格に問題があるというレッテルを貼り、社会的に抹殺しようとした。
 これは明らかな見せしめであり、盾突こうとする人間ヘの脅しである。このような政治手法は本来の保守が最も嫌悪してきたものである。安倍内閣共産主義国のような権威主義体制を目指すのであれば、保守を語る資格はない。
 「前川喜平前文科事務次官手記 わが告発は役人の衿持(きょうじ)だ」(『文芸春秋』7月号)の中で、前川は加計学園獣医学部新設をめぐる官邸側からの圧力を詳述し、 一連の経緯を明らかにしている。前川は率直に「行政が歪(ゆが)められた」と言う。それは「平成30年4月に今治獣医学部を開設する」ことの正当な根拠が希薄なまま、物事が進められたからである。そこに存在したのは、合理的な理由ではなく、権力的な圧力だった。
 いま、文部科学省の内部では「物言えば唇寒し」の雰囲気が広がっているという。前川が懸念するのは、文部科学省の官僚たちが、政治的圧力によって隠藤工作に加担させられることである。「国民の知らないところで筋の通らないことがまかり通るようになれば、デモクラシーは機能しなくなります」
 批評家の斎藤美奈子共謀罪加計学園問題」現代書館WEBマガジン5月30日)の中で、共謀罪加計学園問題を「ひとつづきの案件」と捉える。前川に対する官邸の「やり方」は「権力に逆らうとこうなるぞという一種の『脅し』『見せしめ』であり、監視と密告と疑心暗鬼にまみれた共謀罪下の社会を先取りしているように見える」。的確な批判だ。
 政治学者の小林正弥「『共謀罪』法案の″横暴採決〃は議会の自殺行為だ」(WEBRONZA6月16日)の中で、共謀罪法案の成立過程において「委員会を重視する国会の原則と慣例が打ち壊された」ことを強く憤る。小林は野党議員の反発や牛歩戦術に共鳴し、「憲政の伝統」を守るべきことを訴える。
 小林があえて「伝統」や「慣例」の重要性を強調しつつ批判を加えるのは、安倍内閣が本来の保守から程遠い政権であることを際立たせるためであろう。長年続いてきた制度は、先人たちの経験値に基づく慣習によって支えられている。慣習は言語化されることなく、暗黙知として制度の暴走を食い止めている。その慣習を破壊し、横暴な独断による決定を進める者が、保守であろうはずがない。
 保守は本来、議論を重視する。それは人間の不完全性に対する認識を共有しているからである。人間は間違いやすい。どんなに優秀な人間でも、世界のすべてを正しく認識することなどできず、時に過ちを犯す。保守は理性への過信を諫(いさ)め、多様な他者との合意形成を重んじる。

他者に聞く意義
 保守が疑っているのは、自己の正しさにほかならない。自分の見解は完全なものではなく、誤解や認識不足が含まれているかもしれない。だから、他者の見解に謙虚に耳を傾け、それが説得力をもったものであれば柔軟に取り入れる。多数者の専制を慎重に避け、少数者の立場にも配慮した合意形成を目指すのが保守政治の王道である。
 現在の安倍内閣は数の論理によって議論を遠ざけ、議会の存在を形骸化してしまっている。反対者の意見に耳を傾けることなく、人間の弱点につけ込んだ圧力をかけることで、議論自体を封じ込める。安倍内閣は保守からかけ離れている。
 小林は安倍内閣を「新権威主義」と捉え、そこに自由民主主義の退行を見る。治安維持を目的とした立法を行い、メディアの情報操作・印象操作を行うという点で、「専制化や独裁化である」と踏み込んだ批判を行っている。
 安倍内閣は保守の先人たちが全力で批判してきた政治勢力そのものに成り果てている。保守政治の崩壊こそ、安倍政治の特徴にほかならない。 (なかじま・たけし=東京工業大教授)

 

  f:id:a-tabikarasu:20170628095614j:plain 2017.6.28

都議選応援「自衛隊としてお願い」 稲田防衛相発言 行政中立性で問題

 稲田朋美防衛相は27日、東京都板橋区で開かれた都議選の自民党候補を応援する集会で、候補について「ぜひ当選をお願いしたい。防衛省自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたいと、このように思っているところだ」と、支持を訴えた。行政の中立的運営から問題になりかねず、自衛隊の政治利用と受け取られる可能性もある。
 自衛隊法は、防衛省職員、自衛隊員の政治的行為を制限。自衛隊法施行令では地方公共団体の議会議員選挙などで特定の候補者を支持することを禁じている。
 集会後、稲田氏は記者団に「地元の皆さん方に対する感謝の気持ちを伝える一環として、そういう言葉を使ったわけだが、あくまでも自民党として応援している」と述べた。稲田氏は集会で「テロ、災害、首都直下型地震も懸念される中、防衛省自衛隊と東京都が手を携えていくのが非常に重要だ」とも強調した。

「行政を私物化」 民進・小川氏
 民進党小川敏夫参院議員会長は27日夜、稲田防衛相の都議選応援での発言について「国民のための行政を完全に私物化している。民主主義をわきまえない発言だ」と述べた。共同通信の取材に答えた。