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黛まどかの四国遍路歩き 同行二人

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黛まどかの四国歩き遍路「同行二人」13 逆打ち遍路 一期一会の寂しさ/6面

 24番最御崎寺(ほつみさきじ)(高知県室戸市)へ向かう海岸線で、久しぶりに道標を見た。と言っても一日二日見ていないだけなのだが、遍路中は小一時間も道標を見ないと、道を間違えているのではないかと不安になる。逆に道標を目にした途端ほっと安堵(あんど)感に包まれる。長いこと歩いてきた国道55号を離れ、山道に入った。たちまち車の騒音が消えて、空気も新鮮になった。何より木陰が涼しくありがたい。最御崎寺の境内で昼食の弁当を食べ、車道を下る。海はいよいよ青く、水平線は弓なりだ。
 津呂(つろ)港は、土佐の国司だった紀貫之(きのつらゆき)が京へ帰る折に、悪天候に阻まれて十日ほど風待ちした地だ。昼下がりの空には、鳶(とび)が輪を描きながら舞っていた。
 25番津照寺(しんしょうじ)を打ち、5時少し前に26番金剛頂寺に到着した。標高100メートルに立つ寺は、最御崎寺の「東寺」に対し、「西寺」と呼ばれる。どちらも嵯峨天皇の勅願を受け弘法大師が開基。鯨の供養塔や大師が飢饉(ききん)から民を救済したという「一粒万倍の釜」があり、周辺の歴史が窺(うかが)える。
 今夜は宿坊泊。大急ぎで入浴すると、次は洗濯の順番待ちだ。階段の上り下りに膝、脛(すね)、足首、指が痛み、部屋に入って一度座ると、動けなくなる。ようやく空いた洗濯機に衣類を放り込み、夕食となった。
 鰹(かつお)や鰤(ぶり)など土佐の海の幸が卓いっぱいに並んだ食堂は、宴会のような賑(にぎ)わいだ。その中に終始笑みを湛(たた)え皆の話に耳を傾ける男性がいた。十年程前、六十歳で遍路を始めて四度目の通し遍路だと言う。最初の二回は奥さんと区切りで歩き、今回は初めての逆打ちだ。ふと昼間言葉を交わした逆打ちのお遍路さんのことを思い出した。「風景って案外覚えていないものだそうですね?」と訊(き)くと、「風景は逆から見ると全く違って見えるものなんですよ」とおっしゃった。脚の痛みのことを相談すると、下り坂は小幅で歩くようにとア ドバイスしてくれた。「こうやって親しくなった人と二度と会えないのが逆打ちの寂しいところです」。まさに一期一会だ。
 遍路を始めてちょうど十日日、実はずっと眠れない日が続いていた。寝つきが悪いうえ連日明け方に激しい頭痛が起こり、目が覚めてしまう。脚も痛い。満身創庚(まんしんそうい)だった。
 私の体調とは裏腹に、翌朝も快晴だった。金剛頂寺の桜の下で靴紐(ひも)を結んでいると、懐かしい声がした。「やあ、元気だったかい?」。スペインからシングルさんが駆けつけてくれたのだ。

 心経の声よく揃ふ花の下

 

<ブログコメント>今日の一面は「アベノミクスの限界露呈」。大規模金融緩和策を続けている日銀が目標の物価上昇2%達成を19年度に先送り。目標達成の先送りはこれで6度目です。同じく1面に、稲田防衛相の日報問題、2面には山本創生相の「加計学園」問題と続きます。来週は予算委員会の国会閉会中審査があるので、「加計学園」や安倍内閣閣僚の発言が大きく取り上げられることが予想されます。それで今日はコーヒーブレイク。6面から、俳人黛まどかさんの四国遍路歩き「同行二人(どうぎょうににん)」を紹介します。連載13回目です。