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日韓 ゆがんでいく記憶

  f:id:a-tabikarasu:20170828160906j:plain 5面/2017.8.28

私説/論説室から「日韓 ゆがんでいく記憶」/5面

 韓国でこの夏、「軍艦島」という映画が上映された。戦時中に朝鮮半島出身者が徴用され、長崎市沖にある通称・軍艦島の炭鉱で過酷な労働を強いられたという話だ。独立運動家が島に潜入して労働者を決起させ、日本軍と銃撃戦の末、集団脱走に成功するというストーリーのようだ。軍艦島で働いたという男性が韓国紙の取材に答え、「集団脱走などあり得ない」と事実とは異なる矛盾点をいくつか挙げ、「映画はもう少し淡泊に描くべきだ」と語っていたのが印象に残る。
 戦後72年。記憶がゆがんでいくようにみえる。主義、主張のために、事実にさまざまな解釈が加えられ、曖昧だった記憶がいっそうデフォルメされていく。
 慰安婦問題では、存命中の元慰安婦の多くは沈黙を続けるが、韓国各地に建てられた少女像は、日本は何も救済措置をしていないという、事実に反する記憶を再生する。日本の保守派は、慰安婦は奴隷ではなかったし、人数も誇張されていると反論するが、女性たちが日本軍人の性の相手をさせられたという最も本質的な事実から目をそらそうとする。
 戦場に行ったり、植民地支配を経験した人たちはもう多くはない。今後は当事者の証言という、記憶にだけ頼るわけにはいかない。後の世代の私たちは、活字や映像といった記録に向き合い、昭和の歴史を学ぶ努力がこれまで以上に必要になる。 (山本勇三)