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メディアは冷静に情報分析を 北ミサイル報道

  f:id:a-tabikarasu:20170830071403j:plain 26面/2017.8.30

こちら特報部/北ミサイル関連過熱報道 メディア 冷静に情報分析を/26面

 北朝鮮が29日、発射した弾道ミサイルは北海道の襟裳岬上空の宇宙空間を通過して、太平洋上に落下した。国連安保理決議に違反する愚行だ。しかし、全国瞬時警報システム(Jアラート)の警戒音が鳴り響き、避難勧告されたといっても、日本が標的とされたのではなく、何ら被害も受けていない。過剰な反応で客観的な事実を見誤る可能性もある。 (鈴木伸幸)

日本上空だが…「わが国に/脅威」あおる首相
 29日午前5時58分ごろの弾道ミサイル発射から数分後、Jアラートが突然鳴り、日本メディアは相次いで「北朝鮮が飛翔体(ひしょうたい)を発射」と速報した。テレビ各局は北朝鮮の過去の弾道ミサイル発射や、軍事パレードを観閲する朝鮮労働党金正恩委員長の映像を繰り返し流した。
 ミサイル発射から約1時間半後に行われた、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の展開訓練の映像も紹介。安倍晋三首相は報道陣に「これまでにない脅威」と表現し、どの局もミサイル関連の報道で一色になった。
 そんな状況に、ビデオニュース・ドットコムの神保哲生代表は「こんな時こそメディアは冷静に情報分析して、過剰な反応を抑えるべきだが、危機をあおる政府に便乗している。これでは問題の本質が見えなくなる」と苦言を呈する。
 もちろん、北朝鮮核兵器や弾道ミサイルの開発は許されない。だが、在韓米軍と在日米軍に取り囲まれた北朝鮮からすれば、体制維持のための自衛が目的。米国の東アジア政策への対抗措置といえる。
 今回のミサイル発射で、安倍首相は会見で「わが国に弾道ミサイルを発射」と述べたが、日本への攻撃が目的ではなく、米国へのメッセージにすぎない。
 Jアラートにしても、政府はミサイルヘの破壊措置命令を出していないのだから、日本に着弾する可能性はなく、矛盾している。
 これまでに北朝鮮から発射されたミサイルが、日本上空を通過したことは1998年8月以来、4度あった。それ自体も問題だが、首相が語った「(今回は)これまでにない深刻かつ重大な脅威」の根拠は不明。北朝鮮のミサイルによる日本への脅威が大きく変わったとは考えにくい。
 それでも、過剰に報道されることに、神保氏は「スキャンダル報道と同じ。本来ならローカルニュースでしかない神戸市議の政務活動費の不正流用疑惑が全国ネットでたたかれるのは、芸能人との不倫で一度盛り上がったから」と解説。
 「故金正日総書記の長男、正男氏の毒殺事件もあったし、特にテレビ局は視聴率が取れるなら、あおるだけあおる傾向がある」
 問題はメディアの影響で「防衛として北朝鮮への先制攻撃を容認」といったレベルにまで、国民感情を悪化させかねないことだ。
 そうした危うさを示した例がある。2001年の米中枢同時テロ後、米国はアフガニスタンイラクでの戦争に突入したが、メディアが「テロとの戦い」一辺倒で政権批判を忘れたことが、その後の泥沼を招いた一因といわれている。
 北朝鮮情報サイト「デイリーNKジャパン」の高英起(コウヨンギ)氏は「元凶は北朝鮮の現体制。日本が脅威を感じても仕方ない」とした上で、こう説いた。「北朝鮮の国民も戦争は望まず、好戦的でもない。あくまでも現体制が問題で、日本は米中韓と協調して粘り強く交渉するしかない。そのためにもミサイル一発一発に、右往左往すべきではない」