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好景気水増しの構図 「崖っぷちは近い」

 f:id:a-tabikarasu:20170905203317j:plain 25面/2017.9.5

こちら特報部/日銀の国債引受額「戦時中並み状況」「崖っぷちは近い」/25面

 <略>
 バブル期を超える長さの戦後3番目の景気回復が続いている(内閣府)のに、銀座の人びとに実感はない。それはなぜなのか。
 慶応大の金子勝教授(財政学)は「結局、個人消費が増えないので、売り上げにつながらない」と話す。
 通常、景気が上向けば、消費は増える。そうならない不思議な状況を説明する数値の1つが、国民1人当たりの名目国内総生産GDP)。国民が1年間にどれだけの価値を生み出したかを示している。
 内閣府の発表によると、2015年は3万4522ドル。経済協力開発機構OECD)加盟35カ国中20位だった。 1996年は3位、アベノミクスが始まった12年の11位からみても、順位、金額ともに落ちている。所得格差も縮まっていない。「為替変動で額が動いている部分はあるが、国民は豊かになっていない」
 とはいえ、大手企業の賃上げが伝えられ、最近では最低賃金も全国で引き上げられた。人々の収入は少しずつ増えていないのか。
 金子教授は「最低賃金が上がったとはいえ、東京でも時給1000円に達しない。これでは1日8時間、月に20日働いても年収200万円を超えない」と指摘。「そういう環境で働く若い人は消費し、結婚し、子を育てるなんて考えられない」
 実際、総務省の16年度の家計調査では、2人以上の世帯の実質の消費支出は3年連続の減少。「若い人だけではない。働き盛りの人から見れば社会保障がぼろぼろ。少々、賃金が上がっても安心してお金を使うことはできないだろう」
 使う金はないし、使おうという気も起きない。だから、飲食店から客足が遠のき、客は電車のあるうちに帰宅を急ぎ、空車のタクシーが並ぶ。中国人観光客がいなくなると、百貨店では閑古鳥が鳴く。そんな状況が銀座を覆っている。
 なのに、周辺では再開発が進み、新しいビルが次々と建つ。地価も上がる。
 「局地的なバブルが起きている」と、金子教授は一刀両断にする。背景にはマイナス金利政策がある。
 銀行の手元にはたくさんの金がある。日銀のマイナス金利の影響だ。だが、貸そうにもいい借り手はなかなかいない。銀行は比較的審査が楽なため、不動産を担保にして再開発の資金を融通するようになった。
 「そのせいで都心や大阪、名古屋の中心部など、少し良さそうな地域に金が集中し、地価が大幅に上がった。しかし、他の地域は下落傾向が続いている」
 こんな生活実感を伴わない数字だけの「好景気」を生んだ背景には、間違いなくアベノミクスがある。
 金融を緩和し、デフレを脱却。消費を刺激して本格的な景気回復を実現するという看板だが、金子教授は「水増しだ」と批判する。
 株価は日銀と年金機構で買い支えている。すでに複数の大企業の筆頭株主になっているとみられる。日銀の国債引受額は430兆円余り。GDPのほぼ8割で、金子教授は「戦時中並みの状況」と指摘する。
 株も国債も、永久には買い続けられない。だが、この買い支えを止めると「その瞬間に暴落し、金利は上昇する」(金子教授)。その事態を避ける手はなく、異次元の金融緩和の出口は見えなくなっている。
 株価以外でも、GDPの総額の伸びには、算出基準の変更による部分がある。有効求人倍率の高さは、人口減少で求職者が減っただけ。金子教授は数字の「水増し」を次々と指摘した。
 「国に産業戦略がなかった。アベノミクスの間に物を作って売るという日本の産業が次々と駄目になっていった。重い病状の体に麻薬を打ってもたせているのが、現在の経済。日銀の買い支えは、いつまでも続けられず、崖っぷちは近い」