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「空気」が支配する島国 / 長編小説『R帝国』

 f:id:a-tabikarasu:20170915203727j:plain 6面/2017.9.15

「空気」が支配する島国 / 中村文則さん長編『R帝国』/6面

 海外で多くの作品が翻訳されている作家、中村文則(ふみのり)さん(40)が最新長編『R帝国』(中央公論新社)を刊行した。並行世界の架空の島国、R帝国を舞台に、全体主義化した資本主義国家の恐怖を描いたディストピア(反ユートピア)小説だ。ヘイトスピーチフェイクニューススマホ依存、ネット炎上など、現代の日本、そして世界が抱える社会問題を盛り込みながら、その流れに″抵抗″する人々を描く。「現政権への危機感からこの小説を書いた」と言い切る作家に話を聞いた。 (樋口薫)

「流れ」に抗する人々
 「朝、目が覚めると戦争が始まっていた」―。物語は、隣国の核兵器発射準備をR帝国が空爆で阻止したニュースで幕を開ける。
 R帝国は″党″と呼ばれる国家党が強権体制を敷いている。民主主義の体裁を取るために存在する野党で議員秘書を務める栗原は、戦争の背後に党の思惑があることを知り、抵抗組織「L」と行動を共にする。
 R帝国には、ヒトラースターリンのような独裁者が存在するわけではない。「空気と流れで、いつの間にか全体主義的になってしまう、『日本的な独裁』を描いた」と中村さんは説明する。その風刺が痛烈だ。
 例えば「人権」「真実」など、党にとって都合の悪い言葉は「うさんくさい」「青臭い」「格好悪い」といった負のイメージを植え付けられ、無効化される。党を支援する「ボランティア・サポーター」たちは、指示されなくても党の意向を″忖度(そんたく)″し、反政府的だと判断した人々への過剰な悪口をまき散らす。
 信憑性(しんぴょうせい)の乏しいネット掲示板のうわさに飛び付き、喜々として攻撃を繰り返す男性が吐き捨てるように言う。「事実? そんなものに何の意味がある?」。フェイクニュースがまん延し、国や政権に批判的な言動がネットでたたかれる現状を想起させる描写だ。
 「強い国と一体化したい、という人々の願望が大きくなっている。もはや日本はR帝国になっているのかもしれない」と、中村さんは懸念を隠さない。「歴史にはそこを過ぎたら後戻りできなくなる地点というものがあり、今の日本はギリギリかなと思っている。この傾向が続くと、何を小説で書いても、新聞で報じても『それは国にとって都合の悪いことだから』と聞いてもらえなくなる」

今が一番息苦しい
 作中で、抵抗組織に加わるサキが父から教えられた「萎縮は伝播(でんぱ)する」との言葉が、著者からのメッセージだ。「作家になって15年、表現の自由にまつわる空気は今が一番悪い、息苦しいです。でも、誰かが萎縮すると、それは伝わるんです。だからこの小説は萎縮ゼロ、書き切ったという思いがある」
 小説は昨年5月から今年2月まで新聞連載された。連載中、米国でトランプ大統領が選出され、オーウェルの著名なディストピア小説『1984年』がベストセラーになった。「今この小説を書いているのは自然な流れ。世界の読者にも問いたい」と強く感じたという。
 大江健三郎さんやサルトルに影響を受け、「物言う作家」を自任するが、難解な思想小説ではなく高いエンタメ性を備えた作品に仕上げた。「学生時代、『日本の戦争は間違っていなかった』という本がはやったが、戦争文学を多く読んでいた僕にはそのうそがよく分かった。若い読者がこれから過激な思想に触れたと時、この本が鎧(よろい)になってくれればと思います」

 

<ブログコメント>今朝、隣国が弾道ミサイルの発射テストを行いました。日本の上空と言っても高度800キロの宇宙空間を通過していったのですが、政府はJアラートを発動させ、「建物の中や地下に避難を」呼びかけました。日本に向けてミサイルが発射されたかのような空襲?警報です。高度800キロがどれくらい宇宙なのか。映像などでおなじみの宇宙ステーションが高度400キロといわれています。ミサイルは宇宙ステーションの倍の高さを飛んでいったわけです。そのことがわかっていて、政府は地下への避難を呼びかけたのですから、対応は意図的で、まるで戦時体制をあおるかのようです。小説『R帝国』の話ではありません。今朝の日本です。

 f:id:a-tabikarasu:20170915210236j:plain 2017.9.15 朝 Jアラート発動