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飢饉じゃない。大量殺人だ。

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本音のコラム/ジャガイモ飢饉 師岡カリーマ/29面

 19世紀半ば、アイルランド農民の主要食物だったジャガイモの疫病が大発生した。食糧難による死者は100万人を超え、さらに多くの市民が移住。いわゆるジャガイモ飢饉だ。アイルランドの人口は、今も飢饉前の水準を回復していない。
 「飢饉じゃない。大量殺人だ」。教師兼ガイドが言う。当時はアイルランド全土が英国の一部だった。世界一富める国で100万人が飢えて死んだのだ。その間も作物は金になる所へ輸出されていた。ロンドンの政治家は、食料を恵むより働かせよと主張。だが価格高騰する食料を賃金では買えず、集団労働は飢えた体を伝染病にさらす。英国政府の責任については今も議論があるが、 1997年には当時のブレア首相が謝罪した。
 国連は先日、紛争や気候変動の影響で飢えや栄養失調に苦しむ人はここ2年で急増し、8億を超えたと発表。世界人口の11%だ。紛争地域に食糧を届けるのは困難だが、それ以上に国連は資金不足を訴える。軍備に費やす金は年に160兆円ある世界で、だ。
 食糧も運搬手段もあるなら、飢餓は人災だ。私たちはその現状に麻痺(まひ)し、我知らず加担していないだろうか。そういう私も、腐った残飯を今日も捨て、労働条件が疑わしい激安商品を買い、預金は兵器に投資される懸念があるという。「大量殺人だ」という言葉が、突き刺さる。
(もろおかカリーマ/文筆家)