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勝手にリセットするな

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本音のコラム/「日本をリセット」 宮子あずさ/21面

 字に起こすのもうんざりするが、小池都知事が「日本をリセット」するため「希望の党」なる新党を結成した。私はこの国で、あれこれなりゆきやしがらみを引き受けながら生きている。勝手にリセットするなと思う。
 私は精神科の看護師として、過去を清算したいと願う人と出会う。親子の関係、人生の選択…。そこには不本意の積み重ねがある。
 そんな時、私は精神科で働き始めて間もなく聞いた、ある同僚の言葉を思い出す。人生をやり直したいと泣きじゃくる若い女性に、同僚はこのように言葉をかけた。
 「人生をやり直すのは無理。でも、仕切り直しはできるのよ。なんとかなるから大丈夫」
 うまいいい方だなあ、と思った。そしてやさしい言葉だな、とも。
 私たちが今抱えている問題は、どんなに嫌でもやはり自分の人生の一部である。全部を無にはできないが、抱え方、向き合い方を変えることはできる。こうした思索の所作を身につけることが、私たちを真にたくましくすると思う。
 国の仕組みやあり方も同様。「日本をリセット」は実際にはある問題をなかったことに見せるごまかしにすぎない。
 リセット願望は誰の頭にもあって、ふととりつかれる。だが、この世にはそうそううまい話はないのである。甘い言葉にだまされるのは、もうよそう。 (みやこあずさ/看護師)