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「永続敗戦の実態」 「生きづらい現実 背景に」

 f:id:a-tabikarasu:20171112082519j:plain 29面/2017.11.12

本音のコラム/「永続敗戦の実態」 山口二郎/29面

 政治学者、白井聡氏が書いた『永続敗戦論』は日米関係を鋭利に分析する好著である。日米戦争に敗れた後、日本は米国の占領下で政治体制を再構築し、日米安保体制に組み込まれて、外交・安全保障に関しては従属国となった。ナショナリストを自称する保守派の政治家は、安全保障面での対米従属という現実からは目を背け、敗戦による憲法体制の変革に対する怨念を米国ではなく、国内向けに発散してきた。これが同書の要点である。
 今回のトランプ訪日とそれをめぐるメディアの報道は、白井氏の議論を実証するものであった。米国は日本を最も重要なパートナーと考えているというのは日本側の勝手な思い込みである。最大のおもてなしであるはずのゴルフの場で、大統領は首相のミスショットにイラついてさっさと先に進み、ツイッターでは日本にたくさん買い物をさせたぜと、品のない自慢を書いていた。
 メディア、特にNHKテレビは、もっぱら両首脳の蜜月関係をこれでもかと映していた。従属の現実を覆い隠すために国民を洗脳するようなものである。大統領の言いなりに武器を購入することの是非について深い検証を行ったのは7日の毎日の記事だけだった。
 大統領を急いで追いかけようとしてバンカーの縁から転げ落ちた首相の姿は、日本という国そのものの象徴であった。 (やまぐち・じろう/法政大教授)

 

週刊誌を読む/「生きづらい現実 背景に」座間9遺体事件/29面

 私は宮崎勤元死刑囚など凶悪事件の犯人とは何人も関わってきたし、今も相模原障害者殺傷事件の植松聖被告に月に何度も接見している。社会を震撼させた事件というのは何らかの時代的背景を有しているのだが、それらと比較しても座間市の9人遺体事件はひどすぎると言うほかない。
 社会に生きづらさを感じ、もう死んでしまいたいと思っている人が多いという現実が、この事件の本質的背景だが、それに便乗して被害者らを呼び寄せていたという犯行手口には唖然とするしかない。ただ私はこれまで実際に事件当事者と接してみて報道とのずれに驚くことも多かったので、この段階で結論めいたことを語るのはなるべく控えようと思う。
 週刊誌は、被害者らの家庭環境などを報じているが、それらを読むと深刻な気持ちになる。『週刊新潮』11月16日号によると、最後に犠牲になった女性は、母親が夫の暴力から逃れて生活保護を受けながら子育てを続けた母子家庭で、その母親がこの6月に亡くなったという。
 また『週刊文春』11月16日号によると、犠牲者の1人の26歳の女性は、小さな子どもを抱えて今夏に離婚。心に病を抱えながら風俗店で働いていたという。いずれも生きづらさを抱え、死んでしまいたいと思ったのだが、それが容疑者との接点になった。何ともやりきれない事件だ。
 前出『週刊新潮』によると、記者が自殺願望の20代女性という設定でツイッターに投稿してみたところ、今回の容疑者のような返信が、半日で50件以上も寄せられたという。まさに今回の事件は起こるべくして起きたというわけだ。この事件については今後もフォローしていこう。
<略>
(月刊『創』編集長・篠田博之

 

<ブログコメント>今日は同じ29面にある連載記事を2本並べてみました。日曜日に登場する山口二郎さんの「本音のコラム」と篠田博之さんの「週刊誌を読む」です。