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朝鮮有事の際の被害想定 なぜ公表しない?

こちら特報部/朝鮮有事の際の被害想定 なぜ日本は公表しない?/26面

 米韓両国軍は4日、史上最大規模の合同空軍訓練を始め、朝鮮半島の緊張が高まっている。1日には、福岡市で北朝鮮のミサイル発射を想定した避難訓練があった。大都市圏では初めてだ。不思議なのは、政府が朝鮮有事の際の被害想定を公表しない点だ。米国議会などは発表済み。国民は被害規模も分からず、不安を募らせている。(安藤恭子

政府、存在認める
 福岡市では1日、北朝鮮弾道ミサイルが上空を通過するとの想定で、市内全域の携帯電話への緊急速報メールの配信や公園と小学校での避難訓練、地下鉄の停車などが実施された。
 国と自治体共催の訓練は24回目だが、首をかしげたくなるのは訓練の前提にあるべき被害想定が一向に公表されないことだ。
 海外では既に発表されている。米議会調査局は10月末、「朝鮮半島で戦争が起きれば、核兵器の使用がなくても最初の数日で最大30万人の犠牲者を想定」との報告書を出した。
 この報告書では、1分間で発射弾数1万発との北朝鮮の砲撃能力に言及。「韓国と北朝鮮の両方で、10万人の在韓米国人を含む2500万人程度に影響が及ぶ」としている。核兵器が使われた場合には死者は数千万人に及び、韓国は壊滅的な打撃を受けると推測、弾道ミサイルによる攻撃は日本にも及ぶとした。
 先月22日には、ロンドンに本部を置く欧州のシンクタンク「欧州外交評議会(ECFR)」が北朝鮮の「核攻撃標的リスト」を公表。北朝鮮からの情報として、アジア太平洋の米軍基地や米国の本土都市を狙う準備ができているという点を指摘。ソウルなど韓国の主要都市と並び、東京、大阪、横浜、名古屋、京都を名指しし、日本への攻撃可能性があると伝えた。
 北朝鮮による新型大陸間弾道ミサイルICBM)発射を受け、米共和党のグラム上院議員は今月2日、テレビで「軍事衝突が近づいている。在韓米軍の兵士らの家族を韓国から退避させるべきだ」と訴えた。
 トランプ米大統領は「全ての選択肢がテーブルにある」と軍事的手段をほのめかし、安倍首相も一貫して支持するとしている。政府に被害の想定はないのか。
 防衛省報道室の担当者は取材に「北朝鮮の軍事能力や意思を見積もりするシミュレーションは継続しており、その中には、日本が攻撃を受けた場合の被害想定も含まれる」と、被害想定があることを認めた。
 ただ、公表については「国民への影響が大きい。対外的に手の内を見せることにもなり、考えていない」と話す。パニックを恐れてということなのか。だが、度重なる避難訓練によって不安は醸成されている。

「現実味ない訓練、不安あおるだけ」
 ジャーナリストの布施祐仁氏は「首相自らが『国難』と指摘し、核攻撃の可能性もある中、そのリスクを国民に伝えないのは、説明責任を果たしていないことになる」と批判する。
 国際ジャーナリストの春名幹男氏も「被害想定について、政府もマスコミもだんまりで、まるで福島原発事故の発生時点を想起させる。防衛機密はあるだろうが、可能な限り情報は出すべきだ」と求める。
 布施氏は「実際には、弾道ミサイルは宇宙空間を通過するだけ。被害想定を説明せず、現実味のない訓練をしても不安をあおるだけだ」と話し、こう続けた。
 「仮に核弾頭を装着した中長距離ミサイルが撃ち込まれたとすれば、頭を抱えて座り込んでも助かりようがない。結局は北朝鮮との対話の道を探るしかない。圧力一辺倒の政府への反対世論が高まるのを恐れ、被害想定を公表しないのだろうが、これではとても民主主義国家とは言えない」