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安室奈美恵と私たち 「男に媚びない自立心」

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考える広場/安室奈美恵と私たち/4面

「男に媚びない自立心」 東洋英和女学院大教授/与那覇恵子さん
 安室さんにはあまり沖縄のイメージがありません。沖縄という地域と関係なく、 一人の自立した女性、アーティストとして認識されている。それは素晴らしいことだと思います。
 沖縄は1972年の本土復帰以来、持ち上げられたり、けなされたりしてきました。こうした本土の動きに対し、沖縄の人たちは相反する二つの気持ちを抱いています。本土の人たちが沖縄に抱くいいイメージに喜びを感じ、それに合わせる一方、地元愛から本土を忌避する。
 沖縄を舞台にしたNHKの朝ドラ「ちゅらさん」がブームになった時も、地元では歓迎する声がある半面、批判の声もありました。基地の話が全く出てこなかったからです。実は、私は沖縄風俗の考証でドラマに関わりました。沖縄というと基地ばかりが注目されてきた中で、庶民の生活を取り上げるのもいいと思ったのです。安室さんも、いい意味でかつての沖縄のイメージにこだわらない。本当はこだわっているのだろうけれど表に出さない。
 安室さんの容姿はフィギュアを思わせます。リカちゃん人形みたいな。だけど、女性的な格好はしているけれど、男に媚びたところが全然ない。ある意味、女性性のイメージを変えましたね。そういう彼女の自立心は沖縄だからこそ養われたとも思います。沖縄の人は平均して結婚が早く、離婚も多い。安室さんも彼女のお母さんも二十歳で結婚し、離婚を経験している。失敗しても若いから取り返しがつくというわけです。だから、沖縄の女は男に頼らない。本土で暮らす沖縄の女性が今は専業主婦をやっているなんていうと「病気ねぇ?」と言われてしまう(笑い)。
 安室さんが沖縄のイメージを良くして、沖縄出身者であることを隠さなくても良くなったという話があります。確かに、沖縄出身者は長年、本土に対し劣等感を持っていました。大阪府警の機動隊員の「土人発言」のように本土からの差別も根強い。本当の私はカッとするたちで、地元にいたら力に訴えかねない人間ですが、差別に対して正面から闘いを挑んでもだめだと思うんです。安室さんはそういう私たちの複雑な思いを超えて、一人の人間として存在している。別の闘い方があることを示してくれたと思います。(聞き手・大森雅弥)

 よなは・けいこ 1952年、沖縄県生まれ。女性文学会・大庭みな子研究会代表。著書に『現代女流作家論』『後期20世紀女性文学論』など。近著に『文芸的書評集』(めるくまーる)。


 安室奈美恵
 1977年、沖縄県生まれ。92年にグループ「SUPER MONKEY'S」でデビュー。後にソロ転向。97年の「CAN YOU CELEBRATE?」は結婚式の定番。同年結婚を発表、98年に出産、その後離婚し、シングルマザーに。96~97年ごろ、茶髪のロングヘアにミニスカート、厚底ブーツ姿の若い女性「アムラー」がブームになるなどの社会現象も生んだ。