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本音のコラム「ケアと疎外感」 宮子あずさ

本音のコラム「ケアと疎外感」 宮子あずさ/25面

 津久井やまゆり園で重度障がい者19人が殺害された事件から1年半。先週事件を起こした元職員の現状が報じられた。
 彼は、「障がい者は不幸しか生み出さない」と確信したきっかけとして、浴室でおぼれかけた入居者を救命した際、家族が喜ばなかった事実をあげたという。いかなる理由も凄惨な事件を正当化しないが、これを知った瞬間、心が痛んだ。
 なぜなら私も、看護師になってしばらくの間、似たような感覚に一時とらわれていた。せっかく救命できても、手がかかるようになった家族からは喜ばれない。そんな経験を何度もしたからだ。
 本当なら、気の毒な人にこそ、やさしくありたい。なのに、わき上がってくるのは、患者とともにうち捨てられるような、疎外感。すさんだ気持ちが、患者への気持ちや態度を硬くする。
 今もこの疎外感は残っているが、飲み込んで働けるようになった。これも、激しい感情をぼやいて薄める仲間のおかげ。また、看護師への専門職としての評価が、社会的なねぎらいとなっているのもありがたい。
 介護にせよ、看護にせよ、ケアを仕事とする人間は、きれい事ではない現実を見る。家族に見捨てられた人の世話をする、私たちの疎外感の問題。いくら情のある家族を見ても、埋め合わせは効かない。この問題の存在を認めた上で、対処が必要だ。 (みやこあずさ/看護師)