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3冊の本棚 きょうは藤沢 周さん

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3冊の本棚 きょうは藤沢 周さん/8面

スター女優が輝く陰で
 すでに如月(きさらぎ)というのに、いまだ正月気分を引きずって、映画やドラマばかり見ている。「ああ、締め切りが!」と舌打ちしながらも、いつのまにか女優さんたちの美貌と演技に口をだらしなく開けているのである。「やっぱ、日本の女優さんが今も昔も、一番いいな」と声を上げても、真夜中に同意する者もなく、咳してもひとり。
 うん?  いや、いらっしゃった! ①北村匡平(きょうへい)『スター女優の文化社会学作品社・3024円)。「永遠の処女」と言われた原節子と、「肉感的な魔女」京マチ子の大スター2人を軸に、戦後の集合的無意識を浮かび上がらせた名著である。スクリーンとファン雑誌を綿密に、舐(な)めるように、凝視・分析しながら、占領期・ポスト占領期のスター女優像の変遷を追った。アメリカの性的な占領を解除するようなイメージを構築し、「正義と規範」を体現したのが原節子ならば、豊満で過激な身体から鬱屈(うっくつ)した若者のエネルギーを爆発させ、「敗者」を乗り越えようとしたのが京マチ子豊富な写真とマニアックな批評は、映画はむろん、メディア文化論、社会学的にも垂涎(すいぜん)。
 松本清張原作の映画にも魅力的な女優たちが出ていたが、②高橋敏夫『松本清張「隠蔽(いんぺい)と暴露」の作家』集英社新書・821円)も必読。没後25年を越える「社会派ミステリー」作家が、今、なぜ、さらに読まれ、映像化されるのか。戦後から「新たな戦前」へと変わる今こそ、松本清張が旺盛に書き綴(つづ)った作品群が重要なのだ。人と社会と国家が隠し続けたもの、占領下日本の巨大な密室、そして、これからも隠蔽し続けてのさばっていく政界、官界、経済界の病巣をえぐり出すために、清張の「疑い」の手法が必要とされることを提示。具体的な作品紹介だけでもゾクゾクするが、「黒の作家」が抱え込んでいた謎にも唸(うな)らされる。
 清張なら、この事故をどう描いたかと事あるごとに思うのが、1985年8月に起きた日航ジャンボ機123便の墜落事故だ。元へ。これは、事件だ。すでに昨年から話題になっている③青山透子『日航123便 墜落の新事実』河出書房新社・1728円)。衝撃の書である。御巣鷹の尾根に墜落する前に、ジャンボ機を追尾していた2機の戦闘機、また機体に添い続けたオレンジ色の物体、さらに、国はなぜあえて救助活動を遅らせたか。日米が隠蔽した恐ろしい事実に背筋が凍る。その体質が今なお続いていることへの重大なる警鐘なのだ。

藤沢 周(ふじさわ・しゅう)/作家。「雪かきなら任せろ」の越後生まれ。重きに泣きて、3日寝込む。


<ブログコメント>今日は新聞休刊日なので、昨日の紙面から記事をもう一つ。日曜日には、見開き2ページにわたる「読書」面があります。本を書いた人の紹介(「書く人」)と本の書評(「読む人」)。偶数ページの「書く人」に、作家が持ち回りで好みの本?を紹介する「3冊の本棚」という書評コラムがあります。ふだん、図書館や本屋から遠いところで暮らしているからなのか、この「3冊の本棚」、けっこう興味津々です。