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小川勝の直言タックル「人種・国籍 越える演技」

小川勝の直言タックル「人種・国籍 越える演技」/23面

平昌フィギアペア
 平昌五輪が始まって、普段は見る機会の少ない競技も、テレビで大々的に中継され始めた。日本の有力な選手や、外国の金メダル候補以外の選手の中から、五輪という機会に、見てみる価値のある選手について、書いてみよう。
 フィギュアスケートは日本でも最大級の注目競技だが、男女のシングルの注目度に比べると、ペアは普段、それほどの注目度はないように思う。
 ペアの強豪国と言えばカナダ、中国、ドイツといったところだ。フランスはそれほど目立った成績を残していないが、平昌五輪では、フランスのバネッサ・ジェームズ選手、モルガン・シプレ選手のペアに注目してみたいと思う。
 というのは、ジェームズ、シプレ組の演技そのものが、国籍、人種を乗り越えた相互理解という五輪の精神を伝える、心に残るものであるからだ。2人は2017年の世界選手権で8位、平昌ではそれより上の順位を目標にしていると思うが、ほかのペアと違っているのは、女性のジェームズ選手が黒人、男性のシプレ選手が白人というペアであることだ。ジェームズ選手は30歳のベテランで、生まれたのはカナダだった。そして10歳までは父親の出身地、英国領のバミューダ諸島で育った。その後、米国バージニア州フィギュアスケートをやっていたものの、世界ジュニア選手権には英国の代表として出場している。
 20歳でペアに転向して、フランスのヤニック・ボヌール選手と組んだことから、22歳でフランスの国籍を取った。シプレ選手と組んで試合に出始めたのは24歳の時からだ。
 黒人のジェームズ選手と白人のシプレ選手によって演じられる、お互いへの理解を希求する演技は、観客の心に響くものがある。
 約3週間前に終わった欧州選手権では、フリー演技の音楽は「セイ・サムシング」という13年に米国で大ヒットした曲だったが、平昌五輪の公式ホームページにある2人のプロフィルによると、五輪では、 16~17年に用いていたサイモン&ガーファンクルの名曲「サウンド・オブ・サイレンス」で演技を行うようだ。どちらの曲も、相互理解を願った美しい曲だ。ジェームズ、シプレ組の演技は、世界中のアスリートによる交流を掲げた五輪という大会において、注目されるべき演技であるように思えるのだ。 (スポーツライター