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本音のコラム「まやかしの政治」 山口二郎

本音のコラム「まやかしの政治」 山口二郎/27面

 平昌オリンピックで最も恩恵を受けているのは、安倍晋三首相だろう。日本勢の活躍もあって、テレビのニュースはオリンピック関連の情報に大きな時間を割いている。そうなると、政治の動きに関するニュースはどうしても手薄になる。
 オリンピックの陰で、日本の国会ではとんでもないことが次々と起こっている。政府は「働き方改革」の柱として裁量労働制の拡大を内容とする法改正を準備している。
 それを正当化するための根拠として、裁量労働制の下で働く人の方が、始業・終業時間を定めた働き方をする人よりも労働時間が短いと安倍首相が述べた。
 研究者が不審に思い、野党が国会で迫及した結果、そのようなデータは存在しないことが明らかとなり、首相は答弁の撤回に追い込まれた。
 オリンピックがなければこれは新聞各紙1面に載る大ニュースである。この通常国会の最大目玉法案について、首相が架空の数字を使って売り込みを図ったのである。
 朝日新聞の捏造(ねつぞう)体質はけしからんと国会審議で攻撃を加えた安倍首相は、自分自身の捏造についてどう責任を取るのだろうか。答弁資料を用意した役人が悪いと言い逃れをするのかもしれないが、捏造に踊らされた政治指導者は、悪意はなくても、愚かである。働き方改革については、一度出直すべきである。(やまぐち・じろう/法政大教授)