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藤井6段 新時代の予感 先輩脱帽 異次元の強さ

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藤井 新時代の予感 先輩脱帽 異次元の強さ/28面

 最後まで落ち着き払っていた。広瀬章人(あきひと)8段(31)が投了を告げ、歓声と拍手で会場が騒然とする中、最年少優勝を決めた15歳は険しい表情のまま、ひたすら盤上を見つめ続けていた。=1面参照

初V 最年少6段
 東京・有楽町のホール。決勝は先手の藤井聡太6段(15)が得意の「角換わり」の戦型に進んだ。「積極的にという方針が奏功した」と振り返るように、序盤から攻めて主導権を握った。
 途中で攻めが途切れそうになる懸念もあったが、終盤、 一見ただで取られそうな地点に桂馬を打つ妙手を放ち、現地で解説していた佐藤天彦名人(30)をうならせた。広瀬8段も「難しい将棋かと思っていたが、こんな素晴らしい手があるのを見落としていた」と脱帽する決め手となった。
 序盤には、対局者の持ち時間を表示する機器に異常が発生。広瀬8段が関係者を呼びに席を立つ間も藤井6段は顔色を変えず、何事もなかったかのように次の手を指した。対局に影響はなかったが、アクシデントにも動じない集中力を示した。プロになって1年余で成長ぶりを見せつけた。
 ◇
 準決勝でも、絶対王者の羽生(はぶ)善治2冠(47)を相手に異次元の強さを見せた。対局前、厳しい表情で盤をにらむ羽生2冠に対し、先手の藤井6段はいつも通り淡々とした表情。
 中盤は、プロの間で最近流行している「雁木(がんぎ)」の戦型となった。次々意表の手が飛び出す展開に、山口恵梨子女流2段(26)は「天才同士が戦うとこうなるのか」とため息をついた。
 藤井6段の強気の攻めで少しずつ優勢を築くと、最後は持ち前の終盤力がさく裂した。羽生2冠は「藤井さんは冷静沈着だった。(非公式戦で対戦した)1年前に比べ、対応力も上がっていると感じた」。
 新たなヒーローの誕生を印象づけた鮮やかな勝利。羽生2冠は「新しい時代の感覚を取り入れなければいけないと痛感した一日だった」と振り返り、「藤井さんはもちろんタイトル戦の舞台に立つと思う。そこに私が立っていられるかが問題だ」と苦笑いした。(樋口薫、岡村淳司)

歴代の天才超えるスピード
 藤井6段の優勝は、最年少記録であるだけでなく、驚くべき偉業だ。
 まず、全棋士参加棋戦での優勝である点だ。歴代の年少優勝ベスト5をみると、藤井6段以外の4人は若手棋士のみ参加の棋戦だった。トップ棋士がひしめく全棋士参加棋戦では、これまで羽生善治2冠が4段時代の1987年に達成した17歳2カ月が最年少。今回、中学生が全棋士中のトップに立ったことの衝撃は大きい。
 6段昇段までのスピードも驚異的だ。過去の中学生棋士の中でも、最年少昇段記録を持っていた加藤一二三・9段が16歳3カ月。谷川浩司9段(55)は17歳11カ月で、羽生2冠でも19歳ゼロカ月だった。歴代の天才の中でも飛び抜けた早熟ぶりだ。
 強運も持ち合わせている。藤井6段は今月1日に順位戦で「C級1組」への昇級を決めて5段に昇段し、その後に全棋士参加棋戦で優勝して6段に昇段したが、もしこの順番が逆だった場合、規定により5段のままだった。
 今回の名人、竜王を連覇しての朝日杯優勝は、 1989年2月、当時18歳の羽生2冠が4人の名人経験者を破り、NHK杯を制した際の躍進ぶりをほうふつとさせる。この優勝で羽生2冠の名声は高まり、同年末には初タイトルを獲得した。将棋史に残る今回の快挙を、藤井6段がさらなる高みにつなげられるか、注目される。 (樋口薫)