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作者「自由に表現守って」 9条俳句の掲載を求める

作者「自由に表現守って」 9条俳句の掲載を求める/26面

控訴審結審
 憲法9条について詠んだ俳句を、さいたま市の公民館が月報への掲載を拒否したのは表現の自由の侵害だなどとして、作者の女性(77)が市を相手に俳句の掲載と慰謝料を求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が1日、東京高裁(白石史子裁判長)であった。市側は請求棄却を求め、即日結審した。判決は5月18日。
 昨年10月の1審さいたま地裁判決は「不公正な扱いをして女性の権利を侵害した」として市に5万円の賠償を命じた。一方で、女性が訴えた表現の自由の侵害や月報への掲載を認めず、これらが認められるかが争点。
 この日の弁論で女性が意見陳述し、「自由に物が言え、表現できるという当たり前のことが守られるように判決をお願いします」と、裁判所側に求めた。
 訴状などによると、公民館は毎月発行する月報に、地元の俳句会会員の作品から選んだ1句を掲載。2014年6月に女性が詠んだ「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の句について、公民館は「世論を二分するテーマの俳句は載せられない」などとして掲載を拒否した。
 1審は、公民館側が十分に検討することなく、女性が集団的自衛権の行使容認に反対する思想、信条があると認識したと指摘。女性と市側の双方が控訴していた。

金子兜太さんが支え
 憲法9条についての俳句が公民館の月報への掲載を拒否された問題は、2月に98歳で亡くなった俳人金子兜太(とうた)さんが作家のいとうせいこうさんとの対談で取り上げ、本紙の読者投稿「平和の俳句」(2015~17年)が始まるきっかけになった。原告の女性は「訴訟では、金子さんが心の支えになっていた。いい報告がしたい」と思いを語った。
 1審のさいたま地裁判決前の昨年9月、女性は金子さんの自宅を訪問。裁判の支援者集会で流すビデオメッセージをもらった。メッセージの中で金子さんは、女性の句を「優しい、気持ちのいい句」と評価し、「日常的な問題を行政側が政治的な問題にしている」と掲載拒否した市の判断を批判した。
 金子さんとはこの時に会ったのが最後。金子さんは「この問題はずっと見守っていかないといけないと思っているんだ」と話し、「最後まで頑張らないと駄目だよ」とエールを送ったという。女性は「講演会で何度もこの問題を取り上げてくれたと聞き、心の支えになった」と振り返る。
 問題とされた句は、都内で、赤ちゃんを抱えたり、ベビーカーを押して雨の中、多くの女性がデモに参加した様子を見かけて詠んだもの。句会で、指導者と会員らによって選ばれた。
 1審では、掲載を求める女性の声は退けられた。判決後に市に対して申し入れをし、掲載が実現すれば控訴しないつもりだった。「ただ情景を詠んだだけだが、皆に共感してもらえた。なぜ拒否するのか」と女性は問い掛けている。(山田祐一郎)