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スー・チー政権2年/中 「名声失墜問われる指導力」

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冷める熱気  スー・チー政権2年/中 「名声失墜問われる指導力」/4面

ロヒンギャ/進まぬ帰還  深まる民族の溝
 「ミャンマーは平和だと思う?」。仏教徒少数民族ラカインと、イスラム教徒ロヒンギャとの対立が続くミャンマー西部ラカイン州。3月上旬に訪れた同州の村チュイ・テーで、ラカインの少女(15)が尋ねてきた。首を振ると、少女はつぶやいた。「私もそう思う。争いが広がり、怖い」
 昨年8月25日、ロヒンギャ武装勢力が州内の治安施設を襲撃して始まった混乱後、少数民族ラカインによるロヒンギャ迫害も起き、双方の溝は深まるばかりだ。
 バングラデシュに逃れた約70万人のロヒンギャの帰還は、準備不足のため開始予定の1月から延期され、実現しても再び定住できるのか懸念は強い。
 「374人の身元を確認した。受け入れ可能だ」。3月14日、ミャンマーのミン・トゥ外務次官は記者会見で突然表明した。バングラデシュが2月に提出した帰還対象者約8000人のリストの一部という。
 しかし、選考過程は不明で、帰還が進まないことヘの批判逃れにも見える。NGO「国際危機グループ」のリチャード・ホーセー氏は「難民には恐怖感があり、帰還を望んでいない。374人の意思を確認したのか」と疑間を示す。
 劣悪な難民キャンプでの生活が長引く中、バングラデシュはサイクロンの季節に入った。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は10万人以上の難民が、洪水や地滑りの危険が高い地域にいると警告する。
 ダッカ大学のシェイク・ラーマン教授は「住民は当初、難民を迎え入れたが、負担や環境の悪化にいらついている」と気に掛ける。
 帰還後のロヒンギャの権利保障の議論も棚上げだ。
 2016年9月、アウン・サン・スー・チー氏の要請で、アナン元国連事務総長を中心とする諮問委員会が組織され、昨年8月、ロヒンギャの市民権取得を妨げる国籍法の見直しを提言した。
 だが、翌日、ロヒンギャ武装勢力の襲撃が起き、議論の機運はしぼんでしまった。 一方で、迫害に関し、軍などの責任追及に踏み込まないスー・チー氏への国際的イメージは失墜した。
 「彼女にとって、提言を進めようとした時、想定外の衝突が起きた」。ミャンマー専門家の根本敬(けい)・上智大教授は指摘する。「難民帰還には軍の協力や反ロヒンギャの世論の理解が必要で、身動きが取れない」
 問題の先送りは、泥沼化につながる。スー・チー氏のリーダーシップが問われ続けている。(ラカイン州チュイ・テーで、北川成史、写真も)

ロヒンギャ
 仏教徒が9割のミャンマーで西部ラカイン州を中心に暮らすイスラム教徒の少数民族人口は約100万人で州人口の3分の1と推計される。国籍法上、英国植民地になる前からの先住民族とみなされず、大半がバングラデシュなどベンガル地方からの不法移民の扱いで市民権を持っていない。