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スー・チー政権2年/下 「報道弾圧 文民統制効かず」

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冷める熱気 スー・チー政権2年/下「報道弾圧 文民統制効かず」/6面

言論の自由/デモ規制 急進的僧侶に配慮
 「報道は犯罪ではない」。1月23日、ミャンマー最大の都市ヤンゴンの繁華街に、ミャンマー語や英語の横断幕が並んだ。
 イスラム教徒少数民族ロヒンギャの迫害問題の取材で、治安部隊の資料を入手したとして、国家機密法違反罪に問われたロイター通信のミャンマー人記者2人の初公判を受け、地元記者らが実施した抗議活動だ。
 リーダーのター・ローン・ザウ・テッ氏(34)の憤りは、アウン・サン・スー・チー国家顧問が率いる国民民主連盟(NLD)政権に向いた。「言論の自由を理解していないのか。がっかりしている」
 ロイターは2月、特集記事を配信。記者らが取材した治安部隊によるロヒンギャ10人の虐殺事件を証言を交えて伝えた。配信後、政府は兵士ら16人の逮捕を明らかにしたが、軍の責任に踏み込む動きはほかにない。ロヒンギャが住むラカイン州の取材規制も続く。
 「以前より言論の自由は広がった」。1988年の民主化運動に参加し、軍政下で長年投獄されたNLD国会議員ボー・ボー・ウー氏(54)はスー・チー政権の立場を擁護する。「ラカイン州での取材を拒んでいるのは政権ではなく、軍だ」
 だが、政権の姿勢も議論を呼んでいる。NLDは2月、軍政の流れをくむ前政権が定め、デモや集会の申告を義務付けた「平和的デモ集会法」の改正案を国会に提出した。改正案は、治安を乱すと知りながら、デモなどへの参加を促した場合、最大3年の禁錮刑を科す規定を新設している。
 「急進的な僧侶の活動を阻むのが狙いだが、市民に悪影響が及ぶ」。改正反対活動をする元ヤンゴン地域議員ニョー・ニョー・テイン氏(50)は言葉を強める。
 民族間の和解を掲げるスー・チー氏に対し、急進派仏教徒団体は2015年の総選挙時から「イスラム寄り」と批判。仏教徒が9割の国で影響力を持つ。
 対応に手を焼く中で出てきた法改正案だが、言論の自由には逆行する。このほか、軍政期に言論弾圧に使われた法律が残存。法運用する警察を管轄する内務相のポストは軍が握り、文民統制は確立していない。
 「全ての記者が恐怖を抱いている」。昨年、少数民族武装組織の取材で記者が逮捕されたネットメディア「イラワジ」の編集長チョー・ゾア・ム氏(46)は語る。「この国にはまだ『見えない線』がある。越えたら命を失いかねない一線だ」 (ヤンゴンで、北川成史、写真も)

ミャンマー憲法
 軍政期の2008年に制定され、軍の幅広い特権を認める。上下両院とも議席の25%は軍が指名。内務・国防・国境担当の3大臣は軍最高司令官が任命する。改憲の発議は両院で75%を超える議員の賛成が必要。非常事態の際は、大統領が全権を軍最高司令官に委譲できると規定されている。