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本音のコラム「反則の構造」斎藤美奈子

 f:id:a-tabikarasu:20180526114220j:plain 23面/2018.5.23

本音のコラム「反則の構造」斎藤美奈子/23面

 ①監督が全体的な方針や方向性を示し、②コーチが「相手のクオーターバックを1プレー目でつぶせ」などの具体的な指示を出し、③他の選択肢がないところまで追い詰められた選手が、悩みながらも「つぶしにいくから(試合で)使ってください」と申し出る。
 悪質なタックルに及んだ日大アメフット選手の会見は、旧日本軍の上官と兵士の関係を連想させるものだった。いや、日本の組織にはいまもこのような命令系統、役割分担で動いているところが多々あるのではないか。
 財務省での決裁文書の改ざんも、防衛省での日報の隠蔽(いんぺい)も、森友問題や加計(かけ)問題にも同様の三段構えの構造を感じる。
 森友学園への国有地売却問題で、文書の改ざんに関与した近畿財務局の職員は、自殺に追い込まれた。彼の立場は③の選手に重なる。しかし、虚偽公文書作成の疑いで刑事告発された、②のコーチに当たる佐川前国税庁長官は不起訴になり、さらに①の監督に相当する財務大臣や総理大臣は権力の座に座り続ける。
 不祥事が発覚したと見るや、責任を現場に押しつけ、自分は命令していないと主張する最高責任者。上を慮(おもんばか)って下を守ろうとしない中間管理職。省庁も大学も同じなのだろうか。日大選手の会見は、追い詰められた兵士の立場と心情を図らずもあぶり出した。真実を語った彼の勇気を見習いたい。(さいとうみなこ/文芸評論家)