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本音のコラム「新たな全体主義」 山口二郎

本音のコラム「新たな全体主義山口二郎/25面

 政治学の講義の中で、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』を紹介しながら、全体主義について解説している。
 全体主義という概念は、あの国は全体主義、この国は民主主義と分類するためのレッテルではない。自分たちがいま生きているこの社会の中に、全体主義的な要素が兆(きざ)しているかどうかを検証する物差しである。
 オーウェルは、2+2が4か5か不確かで、支配者が5と言ったら、みんな5だと心から信じなければならない体制が全体主義だと言った。その時に2+2が4だと言い張れば、反逆者として処断される。
 昨年、安倍首相は森友学園への国有地廉売に自分や妻が関わっていたら辞めると啖呵(たんか)を切った。だが、今年、関わったというのは賄賂のやりとりという意味だと自分の発言内容をすり替えた。
 つまり、今の日本は為政者の都合で、2+2が4になったり、5になったりする点で全体主義に近い。
 ただ、今の日本では4だと言い張る人間も存在を許される。その点では完全な全体主義ではない。しかし、いくつかのメディアも多くの国民も為政者が5だと言ったらそうかもしれない、いつまでも4とこだわるのはカッコ悪いと思っているようだ。真実に固執する人間を社会から遊離させるのが、21世紀型のソフトな全体主義なのだろう。 (やまぐち・じろう/法政大教授)