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ネット上に蔓延する「無責任」 畠山理仁

 f:id:a-tabikarasu:20180717094641j:plain 6面/2018.7.12

ネット上に蔓延する「無責任」 現場軽視と他者攻撃 畠山理仁/6面

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 「新潟県知事選。魚沼市での花角(はなずみ)英世候補(注・現知事)の街頭演説。(中略)応援演説に立った商工会長が『新潟県に女性の知事はいらないんです!』と言うと聴衆からは苦笑が。」
 この発信の直後から、インターネット上では「商工会長の発言は女性蔑視ではないか」との波紋が広がった。
 最初に火種を拾ったのは、対立する女性候補・池田千賀子(ちかこ)氏の支援者たちだ。
 「花角候補は隣で聞いていたのに何も言わず、女性蔑視を是認したのか」。そんな趣旨のツイートが一気に拡散された(注・商工会長は6月5日に「女性蔑視や軽視の意図は全くありませんでした」とおわびコメントを発表)。
 一方で、困った事態も起きた。明らかに事実を曲げ「花角候補が女性蔑視発言」との発信をする人もいたからだ。ネット選挙運動の解禁から5年。当初は候補者の主張や活動を紹介する公式アカウントや、支援者たちによる純粋な応援が中心だったネット選挙も大きく様変わりした。
 純粋な選挙運動を「候補者の公式アカウント」が引き受ける一方、匿名の応援者たちによる対立候補への中傷やデマ合戦は年々激化している。
 筆者の元には、花角候補を応援する有権者から次のようなデマ情報も寄せられた。
 「池田候補は県議を辞めないで知事選に出ています。落ちても県議の椅子に戻る気です。フェアな視点で暴いて」
 これは明らかにデマだ。公職選挙法では立候補と同時に失職する。しかし、支援者の間ではこのようなデマが出回った。なかには公式アカウン卜よりも先に、公式発表と全く同じデザインの遊説日程画像を発信する「熱心すぎる」支援者もいた。対立候補への攻撃的なツイートや印象操作は、「草の根」や「非公式」をうたう「勝手連的裏選対」の扇動が一因かもしれない。
 また、花角候補の支援者たちは筆者に対し、「本当に現場にいたのか」「応援者の発言を報じる意味はあるのか」との批判まで投げつけた。
 いやいや、ちょっと待ってほしい。どんな人が応援しているかも重要な情報だ。だからこそ花角陣営は商工会長に応援演説させたのだろう。
 この炎上事案が筆者にとって不幸だったのは、商工会長の発言を現場から報じたのが筆者1人だったことだ。
 理由は簡単。他の記者は現場にいなかった。論戦に参加した人たちの多くも現場にはいなかった。それなのに現場にいた筆者に対し「嘘つき」と威勢よく攻撃した。
 攻撃は手軽な娯楽なのかもしれない。しかし、現場軽視の風潮には呆(あき)れるしかない。いったい、その人たちは何を「事実」と呼ぶのだろうか。
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 はたけやま・みちよしフリーランスライター。『黙殺 報じられない ” 無頼系独立候補 ” たちの戦い』で開高健ノンフィクション賞受賞。 

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