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ヤフー敗訴「責任重い 情報の質」 津田大介さん

ヤフー敗訴「責任重い 情報の質」 ジャーナリスト・津田大介さん/4面

 仙台市の元会社役員の男性がポータルサイト大手のヤフーの掲示板に虚偽の事実を書き込まれ精神的苦痛を受けたとして、同社に投稿記事の削除などを求めた訴訟の判決で、仙台地裁は9日、記事削除と慰謝料約15万円の支払いを命じた。
 問題の投稿があったのは、2016年2月のこと。何者かによって男性の実名や職歴とともに「在日朝鮮人である」という虚偽の内容が投稿された。ヤフーの掲示板やニュース記事に付けられるコメント欄には、ヘイトスピーチや個人の名誉毀損に当たる虚偽情報が多数書き込まれており、ここ数年来、利用者や外部の識者からその運営姿勢が批判されていた。
 17年6月には、ニュースのコメント機能について「複数のアカウントを取得し、多くの意見として印象を扇動する行為」を禁止する対応を行ったが、依然としてヘイトスピーチや虚偽情報への対策は徹底されておらず、事実上の放置状態が続いている。
 今回の訴訟で原告の男性は自身の主張の証明と投稿の削除を求めて17年6月22日にヤフー側に書面を送付。その際に自身が所属する会社の履歴事項全部証明書と個人事項証明書、免許証のコピーなどを添付したが、ヤフー側は投稿の削除は行わなかった。
 なぜヤフーは投稿を削除しなかったのか、理由が弁論で述べられている。彼らの主張を要約すると、①同姓同名の他人である可能性がある②投稿内容は所属会社にとって必要な人材であると捉えることができ、社会的評価を低下させたとは言えない③人格権に基づく削除請求権は過去の判例にないため、認められるのか疑義がある④精神的苦痛は生じていないのではないか―ということになる。これらの主張を一言でまとめれば「ヤフー上に掲載される情報の質について、責任は負いかねる」ということであろう。
 しかし、現実として日本最大のポータルサイトが差別扇動や虚偽情報の対策を取らないのは、社会通念上問題があると言わざるを得ない。ヤフーは単なるプラットフォーム事業者ではなく、ニュース配信事業を行う国内最大のメディア事業者でもあるからだ。情報の質について一定の信頼を担保する必要があるのは論をまたない。
 今回の判決で仙台地裁の村主隆行裁判官は「虚偽の事実が記載されていると知った時点で投稿を削除する義務があった」と、プラットフォーム事業者のヤフーの責任を明確に認めた。ヤフーの主張④についても、「人格的利益より、虚偽の事実を示した表現の自由を保護する理由は全くない」と、同社に対して厳しい判断を示した。
 韓国では昨年10月に大手ポータルサイト「ネイバー」のニュースコメント欄での世論工作疑惑が浮上し、現在も政府から独立して活動する特別検察官が捜査に当たっている。この騒動を受け、同社はこの7月からニュースのコメント欄を廃止した。
 日本のヤフーも、掲載される情報の質に責任が取れないのならば、一刻も早くニュースのコメント欄や掲示板サービスを廃止するべきだ。
(「見張り塔から/メディアの今」 毎月の第4火曜日掲載)