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「自省なき国家の行方」 藤沢周さんの3冊の本棚

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「自省なき国家の行方」  藤沢周さんの3冊の本棚/8面

 <略> 
 たとえば戦後民主主義の、この危機的状況に警鐘を鳴らしたのが天皇だという見方がある。白井聡(さとし)『国体論 菊と星条旗集英社新書・1015円)は、「生前退位」のビデオメッセージを、「天皇による天皇制批判」と見るのだ。
 現在死語となっているかのような日本の「国体」が、じつはアメリカを頂点とした八紘一宇(はっこういちう)として機能し続けている。その事態に対して、いわゆる「お言葉」は、危機を表明したものであると解釈。「積極的平和主義」は究極、米国流平和主義である「戦争をすることを通じた安全確保」であり、国民の犠牲など無視し没落へと突き進んでいるのが、この現代の日本だと。
 震えながらも然(しか)り、とうなずき、保阪正康『昭和の怪物 七つの謎』講談社現代新書・950円)を繰れば、昭和の恐ろしき闇の実態が露(あら)わ。無謀な戦争に突入した背景が、生の証言の数々からリアルに浮き上がってくるのだ。
 まず軍人首相・東篠英機。秘書官などの証言から見えてきたものは…。何が何でも負けはない、突き進め、と日本を悲惨な地獄に陥れた男は、「精神論が好き」「妥協は敗北」「事実誤認は当たり前」だった。つまり、「自省がない」。なにやら現首相と似ているではないか。自省なき国家の行き着く先は、存亡の危機である。石原莞爾(かんじ)、犬養毅吉田茂など軍人・政治家を緻密に検証しながら、日本の未来を考える。
 「没落を運命づけられた政治システムは、本能的にこの没落を早めるようなことを多々行うものである」というサルトルの言葉がエピグラフになっている本、③ノーマン・オーラー『ヒトラーとドラッグ第三帝国における薬物依存』(須藤正美訳、白水社・4104円)。ヒトラーに主治医モレルが処方し続けた「ぺルビチン」なる薬が、人類を最悪の悲劇へと向かわせた驚愕(きょうがく)の事実に唖然(あぜん)。「錠剤の形をしたナチズム」は、現代日本と無関係か? いや、ドラッグは空気の中にあるかも知れぬ。 (作家)