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守って子どもの命 雪崩事故・上 過去にも発生 検証怠る

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守って子どもの命 雪崩事故・上 過去にも発生 検証怠る/21面

 栃木県の雪山で昨年3月、登山講習会に参加した山岳部の高校生7人と教師1人の計8人が死亡した那須雪崩事故。2010年の同じ講習会でも生徒が雪崩に巻き込まれていた。長野県でも約30年前、引率教師が亡くなる事故が発生。高校の部活動で、なぜ雪崩事故が繰り返されるのか。(細川暁子)

 「事故の七年前の講習会でも、雪崩が起きていた。そんな危険な講習会だと知っていたら、息子を参加させなかったのに」。昨年の那須雪崩事故で高校1年生の高瀬淳生(あつき)さん=当時(16)を亡くした母親晶子さん(52)は、泣きながら語る。
 高瀬さんが10年の雪崩を知ったのは、淳生さんを亡くした数日後。11年に夫をがんで亡くし、最愛の息子までも失って絶望している最中に、元山岳部員の子どもを持つママ友から知らされた。「過去の教訓は、なぜ生かされなかったのか」。怒りがこみ上げた。
 10年の雪崩は、 昨年の那須雪崩事故と同じ3月27日に発生。講習会は那須岳周辺で開かれ、県内の高校9校、生徒約50人、引率教員約10人が参加した。登山経験のある教諭が含まれていたが、山を知り尽くしたプロガイドは同行していない。
 当日は晴れで、最高気温は6.4度。雪崩は昼ごろ、標高約1600メートル付近で起きた。現場付近にいた約10人が雪崩で約50メートル流され、腰まで雪に埋もれた生徒も。幸い、けが人はいなかったが、それを理由に、引率した教師らは、雪崩が起きたことを県教育委員会や講習会を主催した高校体育連盟(高体連)に報告することはなかった。
 高瀬さんら遺族の求めで県教委が昨年4月、ようやく調査を開始。埋もれていた事実が明らかになったのは昨年秋のことだ。
 「雪崩が表ざたになると、保護者は心配して子どもに部活をやめさせ、山岳部は存続できなくなる。報告しなくていいと顧問らで話し合った」。10年の雪崩の現場にいた元顧問の男性は明かす。一つ間違えば大惨事になる可能性もあったが、「自然相手の山岳部はリスクが伴うがジェットコースターのようなスリルもある。そこに山岳部の魅力を感じる子もおり、顧問が生徒に雪山体験させたいと思うもの」と続けた。
 雪崩の事実は公になることはなく、7年後の講習会で再び雪崩が発生。今度は悪天候も重なり、8人が命を失った。7年前と同様、プロのガイドは同行していなかった。
 「10年の雪崩を公表し検証していれば、事故は防げたのではないか」。遺族らはそんな思いを強く抱き続ける。
 高校1年生だった奥公輝さん=当時(16)を昨年の那須雪崩事故で亡くした父親の勝さん(47)は「学校側は、自分たちに不利な情報を親に知らせないことを遺族になって思い知った。事故が起きた背景を探り対策を取らないと、どこかでまた同じことが起きる」。惨事が繰り返されないよう、事故の教訓を残すことを強く望んでいる。


那須雪崩事故>
 2017年3月27日午前8時半過ぎ、栃木県那須町那須温泉ファミリースキー場周辺の国有林で「春山安全登山講習会」に参加し歩行訓練中だった県立大田原高など7校の山岳部員らが雪崩に巻き込まれた。同校の生徒7人と教師1人が死亡、40人がけがをした。当時現場では3月としては19年ぶりの大雪が降り、雪崩注意報も出ていた。