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安倍政権の「財界中心」政策 保守派からも異議 中島岳志

 f:id:a-tabikarasu:20181227105807j:plain 1面/2018.12.27

<論壇時評>安倍政権の「財界中心」政策 保守派からも異議相次ぐ 中島岳志/6面

 外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法(入管難民法)の改正案が成立した。自由党山本太郎参院議員は、本会議場での投票の際、牛歩戦術で抵抗しつつ、「(法案に)賛成する者は、二度と『保守』と名乗るな! 保守と名乗るな! 『保身』だ!」と叫んだ。山本は「この国に生きる人々を低賃金競争に巻き込むのか、世界中の低賃金競争に」とも語り、与党議員に向かって「官邸の下請け! 経団連の下請け! 竹中平蔵の下請け!」と声を張り上げた。
 山本の叫びと呼応するのが、保守派の月刊誌『月刊日本』である。12月号では「奴隷扱いされる外国人労働者」と題した特集を組み、入管難民法改正に反対の姿勢を鮮明にしている。編集部は、従来の外国人技能実習制度がいかに外国人の人権を侵害し、過酷な労働を強いてきたかを訴えた上で、次のように論じる。
 「外国人労働者の人権侵害を防ぐ体制も整えず、なし崩し的に外国人労働者受け入れを拡大することは、さらにわが国の国際的信用を失墜させることになりかねない。外国人労働者を受け入れるのであれば、まず彼らの人権を守る仕組みとともに、外国人定住者、永住者を日本社会へ適応させるための社会統合政策を整えるべきだ」「一切の移民を受け入れないという極論を排し、外国人労働者受け入れに必要な体制を整えた上で、的確な制度を整えるべきだろう」
 まさに正論である。このような議論こそが保守の本領と言うべきである。
 同特集の中で、三橋貴明は安倍政権の政策を「安い労働力を確保したい経済界の意向に、ひたすらしたがっている」と批判する。本来、企業がやるべきなのは、「賃金の引き上げと生産性の向上に取り組むこと」であり、移民で人手不足を解消しようとする安易な政策は、日本人の実質賃金をさらに低下させると警告する。安倍内閣の狙いは、単なる人手不足解消ではなく、低賃金で働く人材の確保によって人件費全体を削減することにほかならない。
 入管難民法改正に対しては、日本礼賛本を出版し続けるケント・ギルバードも、自らのフェイスブック(11月23日投稿)で「場当たり的で身勝手な計画」と厳しく批判する。これは「非人道的」な「『使い捨て』政策」にほかならなず、外国人に対する「差別など、重大な人権問題に発展する」可能性があるとする。
 安倍政権の中核的な支持者からの反発は、他の政策でも相次いでいる。安倍首相は、2019年10月に消費税を10%に増税することを明言したが、これに対して内閣官房参与藤井聡は真っ向から批判の論陣をはり、『別冊クライテリオン 消費税を凍結せよ』を編集長として刊行した。ここで藤井は、消費税増税が「日本経済に極めて深刻な破壊的被害をもたらす」と警告した上で、「左右や党派、思想信条の別を超えて」立ち向かわねばならないとしている。
 この別冊に収録された「議員対談」には、自民党の安藤裕衆院議員と共に山本太郎議員が出席している。ここで山本は「消費税という『ブレーキ』を踏んでしまったことが、今の20年デフレ継続の状況を生んでしまっている」と語り、藤井の意見に共鳴している。藤井もまた党派性を超えて共産党の『赤旗日曜版』(11月18日)に登場し、消費税増税反対論を展開する。これを受けて共産党大門実紀史議員は11月22日の参院財政金融委員会で藤井の見解を紹介し、「増税だけで財政再建した国は一つもない」と主張した。
 ここに共通するのは、安倍内閣の財界中心主義に対する異議申し立てである。改正水道法による水道民営化や種子法廃止による種子市場への民間参入も同様だが、国民生活を守ることよりも財界の利益を優先するあり方に、保守が反発しているのだ。
 そもそも保守は議論を軽視した強行採決を是としない。保守思想は人間を不完全な存在と認識し、理性の限界を直視する。ひとりひとりの人間は間違いやすく愚かな存在である。そのためエリートの理性に基づく革命よりも、無名の死者たちが積み重ねてきた集合的経験知や良識を大切にする。
 <略>
 安倍内閣は、議論を極度に軽視する。その態度には、自分たちこそ正解を所有しているという過信が反映されている。そのような姿が保守であるはずがない。
 保守思想を大切にしてきた人たちが安倍内閣に反発する現象は、当然の帰結である。野党共闘は、このような本来の保守派と連動する形で展開されるべきであろう。 (なかじま・たけし/東京工業大教授)


<縁のカタチ>「墓友」になる・下 家族より仲間と「入りたい」/9面

 「ここで暮らし、亡くなってからも、向こうでずっと一緒よね」。神戸市西区のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「ゆいま~る伊川谷」に住む松村弘子さん(83)が、同じサ高住に住む友人の佐藤文子さん(89)に話しかける。すると佐藤さんは「ご主人のとこ、行かないの?」と、いたずらっぽく笑う。このサ高住には、入居者ら向けの合葬墓(共同墓)もあり、二人ともゆくゆくはその墓に入るよう申し込んでいる。
 松村さんは3年ほど前、亡くなった夫や義理の父母らが眠る家の墓をしまい、遺骨を大阪市内の寺で永代供養してもらった。夫と同じ墓に入らないことを責められることもあったが「夫は千の風になった。夫を思うと、すぐそばにいる感覚。同じ墓に入らなくても大丈夫」。
 このサ高住が開所した2009年に松村さんは入居。一緒に入居した中には、夫と死別した人や独身の人もいた。「亡くなった後が不安」という声もあり、入居者たちからの発案で、合葬墓の建設が検討され始めた。葬祭業者を交えて運営方法などを話し合い、近くにある霊園に合葬墓を建てた。
 松村さんは当初、夫と同じ墓に入るつもりだった。専業主婦として暮らし、女性の生き方を考える市民運動にも関わってきた。「私たちより上の世代は墓も、高齢者施設も『入れられる』という感覚。墓じまいや合葬墓は考えられなかったと思う。この10年ほどで社会の認識も変わり、こういうことを理解する人が多くなった」と感じる。
 合葬墓の話し合いに参加した松村さんは、自分の最期をどうするかということを話し合ううちに、仲間たちと意気投合。「私は地縁や血縁よりも、仲間との縁を大事にしたい。このメンバーだったら、同じお墓に入りたい」と思うようになった。その一方で、夫と一緒の墓に入らないことへの罪悪感もあった。
 しかし、墓じまいをせずに松村さんも家の墓に入ったら、墓は残り、東京や京都で暮らす三人の子どもたちの負担になりかねない。夫が元気なころは、二人で彼岸や盆にお参りに行くのを大変だと感じたことはなかったが、一人になって、年齢を重ねると「遠方にいる子どもたちには頼れない」との思いが強くなった。「お参りや掃除だけでなく、墓の管理費や寺への寄付も必要になる。子どもたちは気が楽になったのでは」と笑う。
 合葬墓には、入居者のほか、墓を管理する一般社団法人コミュニティネットワーク協会(東京)の会員や別々に暮らす入居者の家族、先祖らの遺骨も納められる。永代供養付きで、費用は一人当たり30万~60万円ほど。
 佐藤さんは以前から自分の墓が気がかりで、サ高住に入居する前には京都市にある独身女性向けの共同墓地に入る契約をしていた。しかし「だれかが京都までお骨を持って行くのも大変」と、その契約を解約して、合葬墓を選んだ。松村さんらと親しくなれたことも大きかった。「感じがいい人たちばかりでよかった」と話す。
 時々、松村さんは佐藤さんら入居者と、先に逝った仲間の思い出話もする。仲間たちは、合葬墓で眠っている。「あの人も、この人も同じ墓に入っていると思うと、親しみが湧く。一緒に入る人は墓友。向こうにいっても友だちという感覚ね」。自分で選んだ墓を仲立ちに、新たな縁を育んでいる。 (出口有紀)

東京新聞:<縁のカタチ>「墓友(はかとも)」になる(下) 家族より仲間と「入りたい」:暮らし(TOKYO Web)