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「非正規」使うな 厚労相が指示?

      f:id:a-tabikarasu:20190621065305j:plain 2019.6.21/1面

こちら特報部>「非正規」使うな 厚労相が指示?/22面

 「非正規労働者」という用語を使わないように根本匠厚生労働相から求められていると、同省職員が発言した問題。老後に2000万円の蓄えが必要とした金融庁の審議会報告書に関する議論の中でだが、言い換えて労働者の境遇が改善されるわけでもない。同審議会の報告書受け取り拒否のように、問題をなかったことにする姿勢では、と専門家は指摘する。

格差隠し  言葉すり替えか
 発言があったのは19日の野党合同ヒヤリング。厚労相の伊沢知法年金課長が非正規労働者への厚生年金適用について説明する中で「最近『非正規というふうに言うな』と大臣から言われている」と述べ、「フルタイムで働いていらっしゃらないような方々」と言い換えた。亀井亜紀子衆院議員(立憲民主)などから「なぜ非正規という表現を避けるのか」などとただされると、「非という言葉が、働いている人に対してどうなのかという観点だと側聞した」と説明した。
 あらためて20日に伊沢氏に取材すると「緊張して話す中で、ふと役所の中で非正規と言ってはいけないというような話を聞いたことを思いだした」と釈明。大臣の言葉は「非正規労働者の担当課ではないので承知していない。(担当課は)労働の担当部署だが分からない」と答えた。
 それならばと有期・短時間労働課の担当者に尋ねると、「打ち合わせや案件説明の中で、大臣が以前、格差改善に取り組む中で、言葉の使い方に配慮すべきではないかという趣旨の発言をしたと聞いた。職員に使わないように求めるとかではない」とのことだった。
 亀井氏は「この政権はよく言葉をすり替える。退職金が出ないなど大きな違いがあるのに、非正規という言葉を使わないことで、マイナスイメージを消してしまうのではないかと危機感を感じた」と話す。
 当事者はどう感じたか。群馬県伊勢崎市の派遣労働者、木下康春さん(54)は「正社員とは確実に格差があり、言葉の問題ではない。言い換えてイメージを変えようとしたなら問題だ」と話す。今の年収は150万円ほどで2カ月ごとに契約更新がある。「同一労働同一賃金なんてとんでもない。いつまで体が動くのか。働き先はあるのか。先々を考えただけで不安になる」

政権の「歴史改ざん主義」
 安倍政権の下、非正規労働者の割合は4割まで増えた。「政府は雇用がうまくいっていると言うが、それは安い賃金で雇い、必要なければ切れる、企業に便利な非正規雇用を認めているということ」と憤る。
 労組「派遣ユニオン」の関根秀一郎書記長によると、1980年代後半に「非正規」という言葉が使われ始めたころ、否定的な言葉で問題があるという議論もあったという。ただ、「本来あるべき正規ではないという実態を表す言葉。本質的なことを真っ正面から話すためにこの言葉でいこうとなった。言葉をすり替え、問題を見えなくしようとしてるならば大問題だ」と批判する。
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「雇用が増えたといっても、非正規の割合が増えたという批判がある中で、非正規という言葉を忘れさせたいのだろう」とみる。陸上自衛隊南スーダンPKOの日報隠蔽(いんぺい)、森友・加計学園問題の文書改ざん、統計不正、金融審議会報告書の受け取り拒否など、安倍政権が「なかったこと」にしてきた問題を列挙し、強い危機感を示す。
 「言葉や論点をすり替えたり、定義を言い換えたりして正当化してきた。その場しのぎのごまかしが続き、おかしいという指摘が出ても、すぐ次の問題に塗り替えられ、忘れられている。歴史改ざん主義以外の何ものでもない」