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比呂美の万事OK 「つらければ会わなくても」

比呂美の万事OK 「つらければ会わなくても」/11面

Q 友人に嫉妬し自己嫌悪
 高校時代からの友人は、夫同士が同僚。彼女は夫の出世コースに乗り、家庭も円満ですが、うちは逆です。あるとき彼女が何げなく「うちもいつか悪いことが起こるかも」と言ったのを機に会いたくなくなりました。嫉妬する惨めな自分が許せません。(女性)

A つらければ会わなくても
 読者のみなさんのために補足説明をいたしますと、この相談者には、今、不安がさまざま重なり合っているんです。
 夫は出世コースから外れ、それで傷ついてストレスがたまって病気になり、それから事故に遭いました。(不運な夫をいたわりながら生きるのはものすごくストレスになるものですから)今度は妻が病気になって、とても不安な思いを抱えている。
 だから今はそれを受け止めて日々をくらしていくだけで精いっぱい。
 そんな不運と苦労が重なれば、誰だってそうなります。誰だって運のいい友人とその夫をうらやみます。
 問題は、あなたと彼女との友人関係にあるんじゃない。あなたが嫉妬しやすいとかみじめだからというんでもない。問題は、あなたが今、抱えきれないくらい抱えている苦労にある。
 でもそれは人生によくあることです。今は、それに誠実に、焦らずに、思いつめることなく問題に向き合って、一つ一つ対処していけばいいんじゃないでしょうか。そのときのコツは「がさつずぼらぐうたら」「明日は野となれ山となれ」ですよ。
 どの世代の人間にも言えることですが、友人っていうのは、そんなに大切にしなきゃいけない、一生ずっと同じようにつきあっていかなければいけないものでもないんです。
 時にはかけがえのない存在だ。でも知りあってから一生ずっとそうかというと、それはあり得ない。
 人生をあらわす線がある。上がったり下がったりしながら伸びていく。
 そのそばを別の人生が、別の線を描いて近くなったり遠くなったり、ときどき交差したりする。
 交差してまた離れ、離れてまた近づいて、ときにはほとんど重なりあって伸びていく。それが人生における他人との関わりですよ。
 必要なときが来たら交差する。必要じゃなかったら交差しなくていい。
 確実なことは、どの線もそれぞれ自分の人生を生きていること。
 友人というのは、それでいい。親や夫や子どもや恋人とはちょっと違う。だからこそ、友人は、そういう関係の人たちよりつきあいがずっと楽なんです。
 あなたは今、自分の苦労にしっかり向かって生きているでしょう。それでいい。自分を取り戻した頃にふと「会いたいなあ」という気持ちがわいてくるかもしれない。そのとき連絡を取ればいい。向こうが渋ったら、それはそれでいい。
 彼女がいなくても明日の太陽は昇るし、あなたは生きていける。
 (詩人/伊藤比呂美