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「社会に広がる虚無感」 編集局南端日誌

「社会に広がる虚無感」 編集局南端日誌/27面

正常性バイアスの結果?
 台風19号は各地で甚大な被害をもたらした。まだ避難所から離れられない人びともいるのに、次の台風が迫る。すでに暦は10月下旬である。
 海水温の高さが一因とされる。たしかに釣りをしていても、魚種から海中はいまだ夏だと実感する。水温上昇はここ数年続いており、常態化しそうだ。気候は過去とは異なる別次元に入ったのだろう。
 ただ、従来と異なる次元に突入したのは気候だけではない。人びとの倫理観もそうではないか。台風で報道は減ったものの、関西電力の金銭授受問題はそう感じさせる。
 原発建設をめぐる腐敗構造は周知の通りだが、今回それ以上に驚いたのは関電幹部たちの言い訳の拙さだった。世間的には彼らは社会的エリートなのだろうが、その劣化のひどさにがくぜんとした。
 例えば、もらった金品について「個人的にあずかった」と釈明した。ところが受け取ったスーツ券は仕立てられていた。そればバレると、他人のせいにした。いわく金品を渡した福井県高浜町の元助役(故人)が怖い人物で「おびえて」返せなかったという。
 <略>
 「子どもじみた」という表現は子どもたちに失礼だが、この幼稚さは関電幹部にとどまらない。先生も同じだ。神戸市立東須磨小の教員らによる後輩教員いじめである。
 激辛カレーを食べることを強要し、ぬぐいつけ、送迎を強いていた。深刻なのは市教委の対応だ。給食のカレーの一時中止を決めた。いったい何を考えているのだろう。
 公職選挙法に抵触しかねない菅原一秀経済産業相の「贈答品バラまき疑惑」では元秘書や有権者の証言もある。だが、当人は「リストが見つからない」と開き直っている。ほかにもあれこれある。それでも世間の反応は煮え切らない。逆にニヒリズム虚無主義のにおいが強まっている。
 今回の台風では「正常性バイアス」が被害を広げたと語られた。災害などに際し、自分に不都合な情報を無視しようとする人間の特性である。漂う虚無感の原因はこれかもしれない。そうだとすれば、直面している危機は極めて深刻だ。(特報部長・田原牧)