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本音のコラム 「子どもの権利」 斎藤美奈子

本音のコラム 「子どもの権利」 斎藤美奈子/25面

 安倍晋三首相の鶴の一声で決まった全国一斉休校。萩生田光一文科相は「地域や学校の実情」を踏まえた柔軟な対応をと示唆したが、大多数の自治体(教育委員会)は首相の要請に従った。
 この措置の意味するところは何だろう。唐突すぎる、学校現場が混乱する、仕事が休めない、学童保育の方がリスクが高いといった問題も無視できない。しかしより重いのは、確たる論拠もなく憲法が保障する「教育を受ける権利」を一時的にであれ政府や自治体が子どもたちから奪った、この事実である。
 新型コロナをめぐる状況はいよいよ戦中めいてきた。高熱でも病院に行かず、品薄のマスクを調達し、外出を控え、会合を自粛する。そのうえ親や教師は「非常時だから我慢して」と子どもたちに命じなければならなくなった。一方で政府は検査態勢を整えず、発生から何週間も専門家を招集せず、会食もやめず、徒(いたずら)に時間を浪費した。専門家会議は「10~30代」に行動の自制を要請したが、今日、行動範囲が広いのは経済的に厳しい若者たちよりむしろ中高年である。無計画な戦いのために前線と銃後に犠牲を強いた戦時みたい。
 国難だから政府や専門家に従うというのは翼賛体制への道である。大丈夫、まだ引き返せる。各自治体は独自の事情に沿った判断で休校をいつまで続けるか再考すべきだろう。 (さいとう・みなこ/文芸評論家)