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本音のコラム「差別への抑制を取り戻そう」宮子あずさ

本音のコラム「差別への抑制を取り戻そう」宮子あずさ/23面

 第二次安倍政権がようやく終わる。その感慨を深めてくれるような事件が、少し前にあった。
 訪問看護の仕事で、ある高齢男性と話した時のこと。部屋のテレビからコロナ関連の話題が流れた瞬間、暴言が始まった。「中国肺炎だよ。ウイルス兵器も造っている。中国を抑え込めるのはトランプと安倍さんだ。ふたりがいなくなったら世界は大変なことになる」。この後に続いた嫌中・嫌韓ヘイト発言は、とてもここには書けない。
 彼には強度の脳萎縮があり、生活能力はかなり低い。しかし、今目の前にいる彼は、普段とは明らかに違った。しっかりした口調で自説をまくし立てている。ヘイト発言ならばここまでできるのか。そう思うと、絶望的な気持ちになった。
 差別への抑制が緩んでいるのは、世界的な傾向である。米国のトランプ大統領はそのチャンピオン。安倍総理の感性も同様で、どちらも差別そのものを糾弾せず、それに声を上げる人に厳しい。
 このような権力者の心性は、人の心の闇を引き出し、分断を深めている。私たちは第二次安倍政権7年半余で緩んだこの抑制を、なんとか取り戻さねばならない。
 恐怖をあおり、恨みをかき立てるヘイト思考は単純でわかりやすい。どうすれば、差別への抑制を取り戻し、ヘイト発言をなくせるのか。高齢男性の顔を思い出しつつ考えている。(みやこ・あずさ/看護師)

<ブログコメント>8月29日の「安倍首相退陣」記事の付録2です。